Novel:side PUYO

□この手に届くもの
1ページ/4ページ

 ボクは 何の為に 戦って いるんだろう ?


 大事なものは、両手で掬い上げた水のように零れ落ちていくのに。
 大事なものを、護りたったハズなのに。


 失っていくばかりで、この戦い――サタンは“神々の黄昏”って言ってた――に意味を見出せない。



「ファイヤー!」

 ボク達は、今、戦っていた。
 周りは真っ暗闇の森の中。微かな月明かりがボク達の影をうっすらと地面に刻む。

「破岩掌!!」

 ルルーの気合の入った声が聞こえて、少し遅れてから魔物が倒れる音。だけど、別の方から魔物の咆哮が聞こえて、まだ戦いが続くことを教えてくれる。

 ルルーの水晶色の長い髪を生暖かい風が弄ぶ。その麗姿からは予想もつかないほどの拳や蹴りで、彼女は踊るように魔物を倒していたが、さすがに疲労が溜まってきているらしい。

 細い肩を荒く上下させながら、ルルーが叫んだ。

「全く、どれだけの魔物がいるんですの!?」
「ルルーっ、後ろだ!」

 ルルーの背後、闇の中で、月光を放つような刃が一閃した。剣を操るのは、銀髪に黒衣の、ボクよりは年上の少年。

「おおよそ沢山……ってところだな」

 赤黒く染まった剣を一振りし、刃にこびりついた血を振り払う。伝説の、闇の剣を振るうのは、闇の魔導師――シェゾ・ウィグィィ。

 静かに敵を見据える彼の蒼い双眸は、まるで月の光のように真っ直ぐで、まるでボク達の行く末を射抜くかのようだ。

「あまり離されるな。とにかく数が多い。ひと塊で闘う方が有利だ」

 昔から戦いに慣れたシェゾはテキパキと指示をしては、闇の剣と古代魔導を駆使して闘う。
 
 戦いが好き、と言うわけではないらしいが闘っている時の彼の瞳は、良くも悪くも他人の眼を惹きつける。独特の輝きを放つ。

 ずっと昔はそれが怖かったものだが、今では心強い。彼のお陰で生き残れた場面は物凄く多かった。

「アナタに言われるまでも無いわ!!」

 怒鳴るように言い返すと、ルルーは彼女を囲んでいた魔物たちに痛烈な回し蹴りを喰らわせた。
 
 ほんの一瞬の出来事だったけれど、その一撃で五、六体の魔物が倒れた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ