□時を越える想い□
□時を越える想い【中】
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夜になり朝香姐のいない部屋で一人窓の外を眺めていると女主人がやって来た。
「あんたに客だよ、中岡って言う土佐藩士」
女主人をはじめ他の遊女達は働かない穂積を疎ましく思っていたから目の前の女主人も冷たく言い放つ。
(中岡さん…?何だろ?)
女主人に連れられて行った部屋には中岡慎太郎が1人座っていた。
「おぉー穂積!今日も可愛らしいぜよ」
「中岡さん、今日はどうされたんですかー?」
(久々に会うけど今日は少し元気がないな…。)
「なぁ穂積…俺んとこに来ちょー思わんがか?」
目の前の中岡慎太郎は緊張の面持ちで至極真面目だ。
「中岡さんとこ?遊びにですか…?いいですね。私やる事がなくて手持ちぶさたですし」
私の間の抜けた答えに中岡慎太郎は苦笑いを浮かべた。
「そうじゃないき。俺が言いちょおのは――…」
プロポーズを受ける人の気持なんて高校を卒業したばかりの私には想像つかないけれど、今の私にはわかる。
すごく嬉しい事なんだと。
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