D.Gray-man
□在処。
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無機質な部屋に、本の頁をめくる音だけが虚しく響く。
やがて足音が聞こえ、オレは顔を上げる。
そっとドアが開いた。
「お帰りさユウ」
「…」
途端、ユウはしかめっ面になった。 ドアを閉めてから羽織っていた団服を無造作に脱ぎ、それをオレの顔面目掛けて投げつける。
「いきなり何するさっ」
「うるせェ、何でいつも俺の部屋でくつろいでんだ」
「…」
占領していたベッドに腰掛けたまま、オレは部屋を見回した。
皹の入った窓、
蜘蛛の巣の張った天井、
こういうことにはユウはとことん無頓着。
そんな部屋の中、羊水に浮かべられた蓮の花だけが咲き誇っていて、
「…此処が、オレの居場所だから。」
「…?」
--あれは、
ユウの唯一の拠り所。
あの花が ユウを生かしているから。
ユウの"帰ってくる"場所は 此処だから。
どうか どうか 神様
少しでも長く"此処"に居られますように。
end.