成年編

□in D.C
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不動明王 & 吹雪士郎








シロのアパートからホワイトハウス裏を通りハイウェイに乗る。

日本とは違いアメリカのハイウェイはほぼ無料。

乗り降り自由だがサービスエリアなんてものは存在しない。

トイレや食事、ガソリン補充等は手近な街へ下りてそこで済ませ、また上るという寸法だ。



そんな休憩を挟みながら北へ北へ、3/4の距離を来た所だった。

シロに肩を叩かれ右を指す手が見えた。トイレか? と思いながらハイウェイを下りたがそこは森林の中の一本道

すぐに脇へ停めた。




「どうした?」

「携帯。 それにあと少しだから、ちょっと休んで行こう」




メールだったのか、傍の切り株に座り返信らしきものをしている。




「森の匂い。久しぶり*」




そう言いながら背中を伸ばすお前は、街中より自然が似合うよなと思う。




ここで、このレンタルハーレーにWヒーローWという愛称が付く。

それには次の経緯があった訳だが、その道筋に不憫な奴が一人いる。

これまでしてきた事を思えばそんな扱いをされても仕方がないとも思う。

自業自得、お気の毒な奴♭

オレ達二人ではなく、三人を繋げるような見えない力を考えざるをえない出来事だった。

これも運命か……?

それは、シロが気がついた事から始まった。




********************




休憩中、オレはタイヤやエンジン部分、オイル漏れ等の不具合が無いかを見ていた。

調子はいいが、大切な人を……オレとアイツの大切な奴を乗せているから用心に越した事はない。

そこへ終えたのだろうシロが来た。




「アメリカのライセンスプレートってユーモアでいいよね。こういう自由さが好きなんだ*」

「だな♭ お前ならどうつける?」

「じつは考えてある* WFFK 8918W」

「なるほどね。Fudou, Fubuki, Kira にジャパンの番号か。JFK みたいだな♭」




自分が入っていて嬉しくもあり苦しくもあり……




「暗殺されるかな*」

「されねーよ」

「オズワルドじゃなくて、フドワルドに」

「………」

「………なんなら、キドワルドで」

「なんなら腹上死でもするか?……」

「タチワルドでどお?」

「なんで立向居………ってか、お前がタチ悪い………」




アメリカでは、少し上乗せすればそれぞれの好みや生い立ち、思いなんかをプレートに込められるし

遊び心なんかも表現できるんだ。

オレなら WOAH 918W(オマエらアホだろ、9番18番)サッカーボールを中央にデザインしてみたりな♭




「………ぷっ* ねぇアキ、気がついてた?」

「ん?」

「これ、WエロWだって*」




オレがレンタルしたバイクのナンバープレート


『Washington ELO 1981』




「げっ! マジかよ……気がつかなかった……」

「1981年のエロ? *」

「何かエロい記念の年か?♭」

「結婚記念」

「初夜記念」

「童貞卒業記念」

「三人H記念*」

「自分と重ねるなよ……」

「いいじゃん、記念日なんだから*」

「もう、やめておこうな……」




一頻り日本語での冗談を言って笑ったが次第に虚しくなってきた。

ELOを英語で考えたらそんな羞恥な意味合いは無いのだろうけれど、オレらにはそんな着想しか浮かんでこない♭

アメリカのこの自由な自己表現とデザイン気風にオレらの思考も自由であっていいだろ?

しかし、このナンバープレートには前に所有者だった奴の思いがあるはずなんだ。




「ELO……考えてもわかるわけないか……」

「僕も気になるから調べてみるよ」

「お前の言うエロでは無いぞ。絶対!」

「キミもでしょ……」




シロがたぶんこれじゃないかなと、調べてくれた内容はこうだった。

ELO(Electric Light Orchestra)




「イギリスのバンドだって。かなり人気あったみたいだよ」

「1981は?」




1981年……Twilight

曲検索までかけ聞かせてもらうと………




「……あぁ、これかも………聞いたことあるよな」

「聞きながら走ると気持ちがいいはず*」





きっとこれを聞きながら走るのが好きな奴だったんだよ。

このエレクトリック・ライト・オーケストラというグループの曲には、聞いたことがある曲が多数あった。

前人の意図は別なのかもしれないが、この一枚のプレートに今日ここで出会えたことを光栄に思う。

謎かけを解く楽しさに気持ちが踊る。




人の心が刻まれたからこそ、このバイクに小さな歴史が生まれる。

シロがサッカーボールに何か書いたとしよう、そのボールには心が刻まれ誰かの目に止まる。

オレらがいなくなっても、そのボールはシロを伝え続け後人に何かを残す。

このプレートがオレ達にこの音楽を伝えてくれたように。

なんかこういうの………いいよな♭



オレも伝えたい。こんなオレにも好きだと言ってくれる人がいた事を。

こんなアホな二人を誇りに思うと。



WILY S&HW(I Love You, Shiro & Hiro)



これは後々に誤解を生みそうだと、一人笑った。











読んでくださりありがとうございます。m(_ _)m

話中に出てくるアメリカ事情やナンバープレート(ライセンスプレート)ですが、必ずしも現実と合致しているわけではありません。
超次元のお話として読んでくださいませ。(*^^*)

それから是非、ELOの曲を検索&聴いてみてね*
古いけどいい曲です♪

失礼致しました。





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