頂き物
□マザーグース10
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「…麻里、くん…。」
伸ばされた手をしっかり握り締めた。
「…私はこの手が、好きなんだ…。」
「うちもだよ…貴方の暖かい手が大好き…。」
「…君の真っ直ぐな所が、好きだよ…。」
「…ノーノ…。」
「…だから…私の事は忘れて新しい恋を見付けて幸せになってくれ…。」
「ノーノっ!?」
「君は、まだ若い…私に縛られないで、おくれ…。」
「…そんな…そんなのって!」
「…ボンゴレを…皆を…頼むよ…。」
「ノーノ…?ノーノっ!?…いや…いやぁぁぁぁぁっ!」
それきり彼の瞳が開く事はなかった。
「ったく、彼奴どこ行きやがったんだよ。」
部屋もトイレも見たが何処にもいなかった。一体何処に…そこでふと、壁の隙間に挟まった黒い塊を見付けた。
「おい!なにやって…。」
近付けばその人物は遺影を抱え蹲っていた。
「…大丈夫か?」
しゃがみ込み顔を覗けばその顔は真っ赤に染まっていた。
「隼人…隼人ぉぉ…!」
自分を認識した途端に流れ出した涙。一体いつから我慢していたのかそれは止まる事がなかった。
「隼人…お母さん、知らない…?」
「ん、此処にいる。布団用意してくれないか?…九代目の近くに。」
「…うん…。」
葬儀を終えがらんとした部屋に布団を敷けば隼人がお母さんをそこに下ろした。
「…お母さん…。」
「…愛し合ってたんだな…二人とも。」
「うん…。」
近くにいたから分かるよ。二人とも、お互いに愛し合っていた。歳の差なんて気にならないくらい、二人はお似合いだった。
前に一度だけ、お母さんが弱音を吐いた。
お父さんを失うのが恐いって。寿命にだけは逆らえないって、静かに泣いていた。
幻覚でならいくらでも出せるのに、それでは彼女を癒す事は出来ない。
「…お母さん…。」
流れる涙を拭いその場を離れた。
今だけは、二人きりにしてあげる。
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