頂き物

□マザーグース5
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それは並盛山中を過った時だった。



「…家光?なんで此処に!?」



そこにいたのはオレンジ色のツナギを着た家光だった。



「…誰だ?」



ああ、そうか…髪に幻覚を纏い眼鏡を外す。



「麻里くん!?何故此処に?」



「それは此方の台詞。なんなの!?変なのに追われてんだけど!」



溜め込んだ怒りをぶちまければ家光は困った様に首を傾げた。



「それは分からないが…ボンゴレリング争奪戦が二日後に開催される。」



「ハァ!?なんで?誰と誰が戦うの?」



「綱吉と…ザンザスだ。」



「ザンザス…なんで?」



確か彼は深い眠りに就いているとノーノが以前言っていた筈。なのに、何故?



「九代目が、突然十代目をザンザスにと言い出してな。」



「…それ、本当なの?」



「ああ。」



有り得ない。だってザンザスは…それにあの人が意見を変える筈がない。ノーノはああ見えて頑固なのだから。



「…守護者って、誰なの?」



「大空は綱吉、嵐は獄寺隼人、雨は山本武、雷はランボ、晴れは笹川了平、雲は雲雀恭弥、霧は…六道骸だ。」



なにそれ?皆、どうして?隼人はそれを望んでいたから仕方ないが…何故恭弥や骸まで?



「…ノーノに言っといて…うち、教師辞めるって。」



「っ!?…それは、本人に直接言ってくれ。」



「役立たず。」



それだけ言って背を向けた。ポッカリ、穴が空いた気持ちだった。



みんな、みんな、大空に憧れて羽ばたいて行ってしまった。



綺麗な翼を広げ、飛んで行ってしまった…



うちは、一人ぼっちだ。



路地裏に咲く汚い雑草なんか、誰も見向きもしない。



「…綱吉ぃ!」



ガリ、噛んだ指から血が流れ出した。



嫉妬しか出来ない自分は醜い。ならばもっと汚れよう。



例の団体さん目掛けて氷の爪を降り下ろした。返り血がうちを真っ赤に染める。



それでいい、もっと染まれ。



うちは汚い血塗れ娼婦。



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