頂き物
□マザーグース4
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「ねえ、誰かいないの〜?」
中はシーンと静まり返っていた。のだが、先程から感じる気配にどうやら相手はただの少年達ではないと知る。
ジャリ、ジャリ、歩く度に砕ける硝子片に眉を寄せる。別にオバケや幽霊が恐い訳ではない。ないのだが、やはりこうも暗いとやはり恐怖心が顔を出す。
「ヒッ!」
目の前を過った何かに思わず声をあげる。しかしそれは良く見ると可愛らしい小鳥だった。
「もう、脅かさないでよ…。」
フゥ、息を吐き出し一気に階段を上がった。
漸く辿り着いた頂上。そこから微かに感じる気配にゴクリ唾を飲みドアノブに手を掛けた。
開いた扉の先にいたのは…
「何の用ですか?」
とても綺麗な少年だった。隼人とは違う、どちらかといえば女性受けのいい、そんな少年だった。
「貴方が、生徒達を襲っているの?」
少年はフッと小さく笑った。
「だとしたら?」
「…どうしてそんな事をするの?」
「どうして、ですか…クフフ、僕は探しているのですよ。」
「…なに、を?」
嫌な予感がした。だって自分はこの瞳を知っている。
「マフィアの頂点に君臨する…ボンゴレを。」
「見付けてどうするの?」
キラリ、現れた赤い瞳が不気味に輝いた。
「復讐、ですよ…マフィアに対する。」
ああ、やはり…同じだ。この子はあの日のうちだ。マフィアに復讐を誓った、あの日の…。
「復讐なんて止めて!」
叫べば少年は顔を歪めた。
「復讐なんて、何も残らない…虚しいだけだよ…。」
空っぽだったあの日の自分の様にはなって欲しくなかった。
「説教ですか…何も知らないクセに偉そうに…。」
「分かるよ…マフィアは憎い、マフィアさえ存在しなきゃうちは…。」
うちは…なに?幸せになれた?いや、そんなもしもなんて存在しない。
「貴女もマフィアに大切なものを奪われたのですか?」
「うん、だから…。」
足を踏み出しそっと少年を抱き締めた。
「もう、復讐なんて止めようよ…。」
「…そうですね。」
ホッとした瞬間だった。
「っ!」
「なんて言うと思いましたか?」
背中に激痛が走り身体が崩れ落ちる。
「Buona notte.」
流暢なイタリア語を子守唄にそのまま意識を失った。
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