頂き物

□マザーグース2
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初授業まで後三時間。



準備を終え徐々に肥大する心音に加え手の震えを抑えるべく屋上に向かった。



真っ直ぐフェンスに凭れポケットから煙草を取り出した。



煙草を初めて吸ったのは確かマフィアに無理矢理だった。



あの時はただただ苦くて嫌だったのに、今では精神安定剤の一つだった。



火を点け軽く吸い思い切り吐き出せば若干震えが治まった。



そのままもう一口、そう思った瞬間煙草が消えた。



「僕の前で煙草を吸うな。」



「え?」



瞬間訪れる吐き気に口を抑えた。



「…君、大丈夫なの?」



流石に昨日今日とこんな姿を晒していれば心配になったのか雲雀恭弥は不審げに眉を寄せた。



「…大、丈夫…だから…。」



早くどっか行け。そう言いたかったが苦しさのあまり声にならなかった。



暫く蹲っているとハァと長い溜め息の後フワリ身体が浮いた。



「な、なにす…!?」
「保健室。それとも此処で寝てたいの?」



ああ、そうゆう事か…守るべき生徒に守られるなんて教師としてどうなんだろうか。



保健室に着くと残念ながらシャマルは居ずそのままベッドに降ろされた。



そのまま去って行こうとする雲雀恭弥の学ランを焦って引っ張った。



「……なに?」



「一人に…しないで…。」



瞬間見開かれた瞳に慌てて目元を隠す。



「いや、違くて、あれ?なんで…。」



必死にそれを拭うが涙は一向におさまらない。



すると突然頭にフワリ重力が掛かった。



「変な人。」



そう言った恭弥の顔は何処か優しげで、ノーノの笑みを思い出した。



『いつでも帰って来ていいからね。』



そうだ、うちは一人じゃないんだ。



「ごめ…ありがとう…。」



ベッド脇に座った恭弥はやはり優しく頭を撫でてくれた。



まるでかつてママとパパがしてくれた様に…。







「あ〜、すっきりした!」



漸く止まった涙の代わりに満面の笑みを浮かべた。



「ありがとうね、恭弥!」



もう震えはない。動悸も落ち着いている。これならいける。



「君は誰?」



「あ、うち?うちは二年の数学を受け持つ事になった棚橋麻里!よろしくね!」



と言っても一年生である恭弥とは全く接点がないのだが…。



なんでだろ…また会える、そんな気がしたのは。



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