頂き物
□マザーグース2
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入学式―――
うちは新しく入った先生方と一緒に壇上に上がった。
大丈夫だと思っていた。
「え、若くな〜い?」
「スタイルスゲェいい!」
「可愛い〜!」
ざわつく生徒達の声が雑音として頭を巡る。
手の震えを止める為に手首に爪をたてた。
身体中気持ち悪い何かが這い回る。
シャマルの姿を探したが何処にも見当たらない。
マズイ…息が出来ない…。
なんとか式を最後まで終え這う様に階段を昇った。
最上階までいくと勢い良く扉を開いた。
(助けて…ノーノ!)
手を伸ばした先には漆黒を纏った少年がいた。
「…君…。」
少年が何かを言っていたがそれを聞くことなく意識を失った。
目を覚ました時、真っ白い部屋にいた。
「起きたか?」
聞き覚えのある声にゆっくり起き上がった。
「…シャマル…うち、なんで…此処は?」
「此処は保健室だ。お前さんは生徒に助けられたんだよ。」
ふと思い出す漆黒の少年。あれは確か…
「…そうだ…雲雀、恭弥…。」
此処にくる前に全校生徒の顔と名前は覚えてきた。しかし直ぐに思い出せなかったのは写真の彼が若干幼かったからだろう。
「ハァ…やっていけそうか?」
「…分かんない。」
大勢の前に立った瞬間感じた恐怖を思い出し身体が震える。
爪を強くたてたせいで手首からは血が流れていた。
「一応薬は強くしておいたが、無理だったら直ぐに来いよ。」
「…ありがとう、シャマル。」
膝を立てて頭を埋める。こんな気持ち、これで二度目だ。
一度目は、中国に行って直ぐだった気がする。
しかしあの時だってノーノの事を考えて頑張れたじゃないか。
(大丈夫…大丈夫。)
あの時は一人だったが今回はシャマルもいるんだ。
大丈夫…そう言い聞かせている時点で大丈夫じゃないと気付かずに。
ただひたすら大丈夫と唱え続けた。
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