頂き物
□マザーグース8
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彼女と寝た。
雲雀からそう言われたのが二日前。別に怒りもしなければ妬みもしない。
愛してない訳じゃない。ただ、それで彼女の命が繋げるならそれでいいと思った。
彼女の精神は酷く脆い。もしこれで責める様な事をしたら迷わず死を選ぶだろう。
俺は彼女が大事だった。母親として、彼女は褒めてくれるし叱ってくれる。そんな純粋な彼女だから、俺は受け入れる事が出来たのだ。
彼女は人の痛みに人一倍敏感だった。意識的にか無意識なのかそれは分からないが、その人の欲しい言葉を欲しいタイミングでくれる。
だから、皆彼女に惹かれるのだろう。
「後一ヶ月で学園祭だよ〜!」
「麻里ちゃん、またお姫様やるの〜?」
「王子になりて〜!」
「いや!俺が王子だ!」
「フフフ!皆もまた可愛い格好みせてね!」
そういって微笑む彼女は闇を抱えている。その闇を祓おうとなるべく側にはいる様にしているのだが上手くいかないのが現状。
自分の前では母親を演じようとするからあまり不用意に近付けないのだ。
だから雲雀の存在はかなり大きかった。九代目を除いて彼女が素でいられる存在。それが雲雀だった。
だから俺は妬いたりもしなければ怒りもしない。
彼女から雲雀を奪うなんて残酷な事、俺には出来なかった。
だってそれは、死の宣告をするのと同じだから。
彼女は酷く脆い。何かに依存していないと生きていけないのだ。
だからこそ彼女がその依存から脱け出せる事を切に思う。
母親として、一人の人間として
彼女の幸せを心から願う。
「代理戦争?」
「ああ、これはボンゴレではなく俺個人の戦いだ。」
説明を聞き直ぐに雲雀を思ったが無理な話だろう。
いくら付き合っていると言っても、俺の勝手な我儘を押し通す気はない。
リボーンさんには悪いが奴は諦めてもらおう。
「他に当てはあるんですか?」
「ああ…あんまり気は進まないがな。」
眉を寄せる彼に首を傾げた。
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