頂き物

□マザーグース4
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「皆進級おめでとう!」



と言っても中学は義務教育、何をしなくても勝手に進級出来るのだが。



「そこで皆に此れを書いて欲しいんだ!」



プリントを配れば生徒達がざわついた。



「夢ってなんでもいいの〜?」
「俺、億万長者!」
「馬鹿かテメェは。」



「うん!勿論億万長者でもいいんだよ!ただ、先生は皆にどんな小さな夢でもそれに向かって前に進んで欲しいだけだからさ!」



すると皆楽しそうに文字を埋めていく。そんな生徒達が可愛くてしょうがなかった。



「あ、後!最近なにかと物騒だから、なるべく一人にならない様にね!」



「麻里ちゃんも気をつけてね〜!」
「麻里ちゃんは俺が守るぜぇ!」
「お前じゃ無理だって。」
「ハハハ!」



そんな生徒達に笑みを向けホームルームを終えた。









クルクル、クルクル、職員室で真っ白い封筒をクルクル回す作業に没頭していた。



中に入っていたのは一枚の地図。しかしここいらの地理にあまり詳しくない自分はそれが何処か分からなかった。



「どうしましたか?」



「あ、木崎先生!あの、此処って何処だか分かります?」



「嗚呼…ここなら黒曜の…地図描きましょうか?」



「ありがとうございます!」



良かった、丁度通り掛かったのが歴史の教諭で。彼から地図を受け取りそれを胸ポケットにしまいこんだ。



(帰りに寄ってみよう!)



この封筒は今朝ポストに入っていたもので宛名も宛先も書いていなかった。



しかしフワリ香る香りに直ぐに誰の仕業か分かってしまった。



恐らく何処かで自分の事を知ったんだろう。粋な彼はたまにこういった悪戯をする。



やはり赤ん坊だからだろうか?いや、彼の頭脳は今の自分でさえ解読不可能だろう。



封筒を見詰め笑みを溢した。



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