華アワセ 夢
□鬼札の愛人
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「梨聖、丁度良い。」
温室を経て講堂に行くと、阿波花が講堂の大きな扉の前で突っ立て居た。
その姿を認めると同時に彼方から口を開いたのだ。
『今日、会って第一声とは思えないわね。』
「泉姫候補をお主にも紹介しておこうと思うてな。」
だが、と阿波花は扉の閉まった先にある講堂の中へと視線を巡らした。
「ちと問題が起きてのう…。
お主を呼びに行こうとした所だ。」
まるで私なら事の次第を知っていて、解決出来ると悟っている様だった。
まあ、全て理解しているのだけれど。
『丁度いいわ。
嫌な夢を見たから…胸騒ぎがしていたの。』
「ほう…先詠みか。」
阿波花は思案しながら講堂の重い扉を開く。
扉の先には生徒と思わしき群れがあった。
「梨聖、待ちかねたぞ。」
生徒とは少し離れた上座に金時花が居た。
五光もその後ろに控えて居る。
『札はここよ。』
口を開いた瞬間、小さく歓喜の声が聞こえた。きっと、生徒の子達だろう。
儀式であるのを考慮して、いつもより控え目だ。
「儀式というのに、鬼札は梨聖の所に…解せぬ。のう金時。」
「そうさのう阿波よ。
鬼札が何故二人目を選んだのか、見ものだな。」
そう。明日は儀式がある、という昨夜に鬼札は私の元へ戻って来ていた。
阿波花と金時花に札を渡し、儀式の成り行きを見守る。
新しい泉姫候補―みこと、という名前らしい―はいつまでも戸惑うばかりで一般人のニオイが拭えて居なかった。