Brothers Conflict 夢
□何も知らない君の事
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“男子が喜ぶ女子の行動べスト20♪”
なんて雑誌の特集に数分目を奪われていたけれど、自分がしたいのは男子が喜ぶ行動ではなく、昴くんが喜ぶプレゼントなのだ。
日が沈むにつれてだんだんと涼しくなっていき、気がつけば9月中旬で、9月21日は昴くんの誕生日だ。しかしパーティは平日の今日となった。
『ん〜…』
人知れず唸ってみても何も変わらず、絶賛プレゼント選びに悩み中だ。
「音緒ちゃん…お待たせ。」
琉生さんが背後に立つ。ここは琉生さんのお店で、先程洗髪とドライアーを終えた所で。
他のお客さんに付いていた琉生さんを待っている間雑誌を読ませて貰っていたのだ。
鏡越しに目が合って、思わず呟いた。
『琉生さん格好いい…』
「あり、がと。」
少し頬を染めて、華が咲く様に綺麗に微笑んだ。
琉生さんはまっ白いワイシャツ(カッターシャツ)に黒い
ズボン、腰に短いエプロンをしていて美容師なのだと実感する。
先程もお客さん相手に仕事している琉生さんを見て真剣で格好良いと思った。
「今日は、どうする?」
『あぁ、今日は染色に来ました。』
私は不規則に髪型…というか髪色が変わる。ー種のストレス発散というか、気分転換も含めて。だが今回は特別だった。
その為髪色はピンクに挑戦してみる。
「このまま、染めて、いい?」
『はい、あまり発色しない様に脱色はいいです。』
髪を真っピンクに染めるのは正直避けたい。ピンクは女の子、乙女のイメージが強く、それを全面的に晒すのには抵抗があった。色をショッキングピンクにするなり、工夫したらまた変わってくるが、今回はやめておこう。
「今日…昴くんの誕生会、だね。」
琉生さんは手始めにコームで私の髪を梳く。それが心地よくて目を閉じて身を任せてしまう。
『はい、これの後プレゼント買いに行ってきます。』
「そっか…今日はトクベツ。だから…可愛く、したい。」
それが僕のしごとだから、と琉生さんは本当にアレンジまでしてくれた。
『うっわぁ…ありがとうございます!』
明るい茶髪だった髪にピンクが混ざって、凄く奇麗な色になっていた。
混ぜた比率で云えば、茶色3ピンク7という具合だ。ピンクは多いが茶色のお陰で目立ちすぎず発色されているので大満足だ。
「音緒ちゃん…可愛い。髪もカラーリング、したのに綺麗、そのまま。」
自分の事の様に喜んでくれる琉生さん。腕だけでなく、こういう彼の人柄もあって指示を得ているのだと思う。
『じゃ、行って来ます。本当に感謝です!!』
「気に入って貰えて…良かった。行って、らっしゃい。」
琉生さんのお店を出て吉祥寺の街を歩く。これからプレゼント探しをするのだが、私には強い味方が居る。つまりー人ではない。
『おっ、居た!』
赤髪で目付きの悪い弟が待ち合わの場所には居た。あちらが私に気が付く様子が無いので、名前を呼んで近付いてみる。
『侑介!!』
「あぁ゛!?
………っ!?んなぁ、それ!!」
あぁ、侑介って昴くん同様からかい甲斐がある。面白い程反応してくれ、ついつい頬が緩む。
『どう?
朝一で琉生さんのお店に行ってやってもらったの!!』
クルクルと巻かれて編み込みがされている髪を一房摘んでみせる。綺麗に色付いた髪を見て、口をパクパク開閉させる侑介。
「おまえ…それ、」
『……………………おまえ?』
戸惑っていて侑介は気付かないが、今のは気に触った。
姉に向かって[おまえ]とは何だ!!
『お姉さまと呼びなさい!!
いつも言っているでしょうがぁ!!!!』
「ぐわっ…ガハッ!!」
無防備な侑介の首に思いっきり巻き付き、頭を脇に抱えて首を絞める。
お姉さま・お姉ちゃん・音緒姉・姉貴なら許す!!
「ギブっ…!!
ゴフッ…あ、あああああ姉貴!!」
何とも情けない声を出して、侑介は私に許しを乞うた。
顔は朝日奈家の遺伝子を持っているのに、不幸体質なのか報われずに残念な弟。
『ふぅ、絵麻が好きなら胸張って生きてよ。』
侑介の首を解放し、私はスタスタと歩き始める。
さぁ、スポーツ用品店へ行こうか。
「ちょっと待てっ!!
何でアイツの事、俺が好きにならなくちゃ…」
『え、バレバレだよ?
分かりやすいもん、侑介は。』
置いてくぞー、と私が買い物をお願いしたのにも関わらず、自分のペースに巻き込む。
侑介は複雑な顔をして私の後を付いて来るのだった。