Brothers Conflict 夢

□極上の微笑み
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朝5時を少し過ぎた所。
昨日は弥くんと早めのお風呂を頂いて早く寝た為か、凄く早起きしてしまった。

取り敢えず7時にセットしてあった目覚ましを解除する。


『くぁっ…。』

大きな欠伸をしてカーテンを開けるも、期待していた朝日とは程遠い弱い光が差し込む。

散歩でも…しようかなぁ。


まだ寝惚けている頭で考える。
朝早く起きても、朝が苦手な事に変わりはない。
でも幾分かいつもより楽だな。


『ん〜、』

今度は伸びをして、もそもそと襦袢から私服へ着替える。
お腹空いたな、コンビニで散歩がてら何か買っちゃおう。


そうして私の今日一日が始まったのだけど、今日は良い日だと思う。


「いらっしゃいませ〜」

少し元気の無いコンビニの男性店員さんは顔にクマを付けているが、声はしっかりと接客をしていた。
もう根性で立っているのだろう。


簡単にお腹を満たしてくれる物が無いか探すと、栄養が入ったゼリーとお腹が膨れるスティック型のクッキーがあった。

栄養より量だろ、と瞬時にクッキーを取って会計へ行く。


「ありがとうございました〜」

覚醒してきたのか店員さんは少し元気を取り戻したように見えた。


『おいし…』


行儀の悪さを認めながら歩いて食べていると、何処からか甘い薫りがしてくる。
それはお菓子の様な甘さでなく、もっと上品な…あ、花の匂いだ。


『皐月…。』


すぐ近くの一軒家に、家を囲むように皐月が咲いていた。
五月は一番花が咲くから好きだ。
これでも案外花とかは好きで、将来は花屋になるのが夢だったけなぁ…。
そういえば、マンションの花壇に花が沢山咲いていた。


『美和さんがお世話しているのかな…。』


美和さんはあのマンションの管理人でもあるが、本業はアパレルメーカーの社長さんで、キャリアウーマン。
そんな時間あるのか?






『あれ、』

前方にサンライズ・レジデンスが見えた。
どうやら同じ道を戻らなくても、道を辿れば一周出来るらしい。

結構歩いたな…一周長く歩くなら、来た道帰った方がいいな。

とにかく散歩は止めて五階に行こうとマンションの敷地に入る。
花壇はやっぱり手入れされていて、今日も綺麗に花が咲いている。


「あれ、音緒姉さん?」

落ち着いた、祈織くんの声がしたので声の音源に向けて見ると、マンションの入り口にその祈織くんが立っていた。


「早いね、何処か出掛けていたの?」

私に声を掛けるや否や、近付いて笑顔を見せる。

『うん。散歩してたの。
祈織くんもこれから何処か行くの?』

質問に対し肯定し、私も祈織くんに向けて質問を返してみる。
すると爽やかな笑顔のままこう言った。


「ううん、この花壇に水をあげているのは僕なんだ。」


疑問解決。昔の人はよく[朝起きは三文の徳]だなんて言ったものだ。

その語源は奈良県での鹿から来たそうで、鹿は昔からとても大切にされていたそうな。
鹿に危害を加えた者は重い罰があるので皆恐れていた。
ある時一人の男が珍しく朝早く起きると、家の前で鹿が死んでいた。
焦った男だったが、向かいの家の前に鹿を置く事を思い付き、実行した。
朝早くだったので誰にも見つかる事もなく、向かいに住んでいた男が殺され、男はほくそ笑んだそうだ。


おっと脱線してしまった。
長々と祈織くんの前で無言を貫いてしまっていた。

「音緒姉さん?そんなに意外だった?」

『滅相もありません!!』

逆に似合いすぎて怖いくらいだ、と告げる。
慌てて反応すると今度は違う意味で笑われてしまった。


「音緒姉さんって、僕とは正反対で面白いね。」


祈織くんは、時たまに自虐的な言葉を使う。
そういう時は陰を持っている子が多いのだと知っている。
過去に何かある子や、誰にも言えない秘密がある子…誰だってそれはあるが、それをどうするかが問題なのだ。


『正反対…か。
私もそう思うよ。』
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