黒執事 夢

□CASTODY-身柄-
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「……笑っていたな」


小さな伯爵はアーリーモーニングティーを優雅に啜りながら、誰に言うでもなく呟いた。
しかし、傍に居た執事はそれを拾って返す。


「そうですね……。
躊躇いも見せずに始末するとは思いませんでした」


執事は口角を上げて微笑む。
それを一瞥した伯爵は再び紅茶を啜った。


「気に入ったようだな」

「えぇ、とっても。
人形遊びの趣味は無かったのですが……あれには興味を惹かれます」


伯爵は空いている左手を執事に突き出した。
執事はそれに素早く反応し、その小さな手に新聞を持たせる。
新聞の片隅には、小さな記事が並んでいる。
伯爵はその中の一つから目当ての記事を探し出し、読み上げた。


「……マリーンズ家の当主、ディアーノ・マリーンズ侯爵が銃殺されているのを某日未明、ハウスメイドの一人が発見した。娘のリーリア・マリーンズが行方不明の事から拉致事件ではないかと調べが進められている。」


記事を読み終えた伯爵はそれをベッド脇に放ると、執事に目もくれず尋ねた。


「あれは今どうしている」

「まだ眠っています」


返ってきた言葉に眉を潜める。
この屋敷の主である自分より起床が遅いのはどういう了見だと、不機嫌を表した。


「直ぐに叩き起こせ」

「御意」


さぁ、リーリア・マリーンズの朝は近い。
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