『大好きな嘘』

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…ソファーの上。

長身の身体を縮めて眠っていたヒソカはもう慣れた痛みにため息をつきつつ、うんと伸びをした。

ここは天空闘技場にいる間借りている彼の自室。

そう、"彼の"自室なのだ。

なのに何故部屋の持ち主であるヒソカが自分の身体より小さなソファーで眠らなければならないのか。

ヒソカは1つ欠伸をすると、本来自分が所有するはずのベットに近づく。

そこには既に使用者が1人。

長い髪を垂れ流し、白いシャツを軽く羽織って眠るレイレの姿がそこにある。

シャツの下は黒の下着の上下のみ。

そんな無防備かつ、呆れるほどの緊張感のない彼女に最初は頭を抱えたものであったが、今ではもう慣れたものだ。

この状態がここ最近続いていた。

日中はお互い別々であるものの、夕方になると決まってレイレはヒソカの元に足を運んでいる。

特に用があるわけでもなく、ただここに。

そうして夜まで居座って、シャワーを借りて何故かベットを独占する。

流石に恋人でもないのに1つのベットで男女が寝ることは気が引けた。

否、ヒソカの理性の問題もあるだろう。

ヒソカはベットのふちに腰掛けて、レイレの顔を覗き込む。

普段は飄々とした態度をとる、ヒソカも掴みどころがないような優男なのに、今ここで寝ている彼女は間違いなく女の子で、触れたらすぐ壊れそうな程言い知れない弱さがあった。

ジッと見つめていれば、ピクリと動いてギュッと自分の手を握る。

そして、少し苦しそうに顔を歪めて、涙を流す。

…また、か。

「…レイレ。」

ヒソカが少し肩を揺すれば、すんなりとレイレは瞼を開け、ゆっくりと起き上がって頭をかいた。

「…すいません、またここで寝てしまって…。」

「そう思うなら自分の部屋で寝てくれよ◆」

「ヒソカの部屋からじゃ遠いんですよ…。」

まだ寝ぼけた顔をしていて、このやり取りも何度目だっただろう。

ヒソカはレイレの頬に手を伸ばし、指先で流れる涙を拭った。

「嫌な夢でも見たかい?」

「…また泣いてたんですか、ボク。」

目を擦り、レイレはヒソカに問う。

レイレが涙を流して目を覚ますのはこれが初めてではない。

嫌な夢を見て涙を流すことは度々あった。

何の夢なのかは知らない。

彼女が話そうとしないから、ヒソカも別に訊こうとはおもわなかった。




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