『大好きな嘘』

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一次試験の内容は、二次試験会場まで試験官サトツについて行くことである。

至って簡単でシンプルな試験。

地下道の長い階段で脱落者は何人か出たものの、大半の受験者がサトツについて行っていた。

しかし、ヌメーレ湿原、通称"詐欺師の塒"に入り、霧に覆われた視界の悪い道に何人かが集団から脱線しまったのである。




「…というわけで、ボク迷子になっちゃいました。」

『知らないよ。』

耳元から聞こえる友人の声はやはり冷たい。

「そんなこと言わずに探してくださいよ。ボク遭難してしまいます。」

『…君はいいかもしれないけど、こっちは免許欲しくて必死だからね。』

彼の言葉に苦笑した。

所詮ボクは暇つぶしで来ただけなのだ、仕方ない。

『ま、精々頑張ってよ。』

そう素っ気なく返され、通話は切られた。

孤独感に溜め息を吐き出して、霧が立ち込める辺りを見回す。

「…雑魚を相手するんじゃありませんでした。」

そこら中にある死体を踏みつけ、血溜まりに写る自分の姿を見つめる。

口の端が持ち上がり、弧を描く。

いやらしい笑い方だと自覚はしていた。

どうにかして列に戻らなくてはと思案し、レイレはその場を離れようとする。

しかし、不意にザッと微かな足音が聞こえ、神経が敏感になっていたレイレは目を見開き、其方を振り向いた。

「…ほら、やっぱり◆」

今日会ったばかりの男の声に、警戒を少し緩める。

「君は嘘つきだね◇」

自分の目の前に現れた奇術師に息を吐き出した。

「…貴方でしたか。」

先程と一変し、いつもの笑みを浮かべ、レイレはヒソカを見つめる。

なんてタイミングの悪い時に現れてしまったのだろう。

「君が殺ったんだろう◆」

レイレは黙った。

今更この状況を誤魔化す嘘など吐けない。

死体の山をまた一瞥し、レイレは誤魔化すように笑みをつくった。

「つい、うっかり。」

「うっかりねぇ◇」

探るように、彼はレイレを見つめている。

あまり良いとは言えないこの状況どうやって丸く納めようかと考えていると、彼の側に知らない男が横たわっていることに気づいた。

見たことのない、知らない男だ。

「…まだ生きてますね、その人。」

ヒソカの表情を盗み見た。

わざわざ彼が運んだというのか?

無惨に顔が腫れる彼を見据える。

無意識にそちらに手を伸ばせば、その腕をヒソカが掴んだ。




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