『大好きな嘘』2

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シャワーから上がったら、一瞬彼女の姿が見えなくて少し不安になった。

冷静になれば、彼女の気配はちゃんとあって、ホッと息をつくと、奥の寝室に足を運ぶ。

借りたホテルのダブルベットの真ん中で、彼女はずっと窓の外を見つめていた。

一糸纏わぬ生まれたままの姿を月に晒し、その切なげな横顔が、酷く妖艶に見える。

こちらの気配に気づいたのか、ゆっくりと振り向き、いつもの笑みを浮かべた。

「…何を考えていたんだい?」

「いえ、なんだか今日1日いろんなことがあったから、少し落ち着かなくて…。」

ヒソカはベットの縁に腰かけると、彼女を手招きし、その手を引いて、自分の腕の中に閉じ込める。

レイレはヒソカの胸に耳を当て、そっと目を閉じた。

「…ヒソカの胸の音は、聞いててすごく落ち着きます。」

「そう?」

「温かくて、力強い音…。」

トクンッ、トクンッ…。

一定間隔の心臓の音に薄ら笑みを浮かべ、レイレはヒソカの腕から逃れると、彼の上に膝立ちになって少し高い位置となったそこから、顔を覗き込んだ。

「…好きです。」

真っ直ぐな目でそう伝えるレイレ。

ヒソカは彼女の後頭部を押さえて、唇を重ねた。

熱い吐息の交換と、お互いの舌の感触。

苦しそうに息をするレイレに気づいて唇を離せば、厭らしく銀色の糸が引く。

熱っぽい彼女の瞳と、ほんの少し染まる頬。

ズクリと下半身が疼くのを感じた。

彼女の身体をベットにそっと倒し、頭から足の先まで彼女のキレイな身体を舐めるように見つめる。

そうして、彼女の左胸に視線を向けた。

「これか…◆」

真っ赤な、蝶が白いレイレの身体に羽を広げている。

ツッと指でそこをなぞれば、彼女は苦しそうに顔を歪めた。


『嫌いなんです』

『赤い、蝶が』


いつだったか、彼女がそう言って怯えていた気がする。

不安げな表情をする彼女に軽いキスを落として、ニッコリと微笑む。

「大丈夫◇キミは充分キレイだよ、レイレ◆」

そう言って、首筋に吸い付けば、ピクリと彼女の身体は反応する。

「…怖い…?」

忘れていたわけではない。

レイレだって女だ。

初めての行為に、不安にならない筈がない。

ヒソカの問いに少し間をあけて、首を横に振り、ヒソカの首に腕をまわす。

「…平気です。」

彼の頭を引き寄せて、耳元で囁く。

「ヒソカだから、怖くはありません。」

少し目を見開いて、『そう◆』と小さく答える。

「優しくするよ◇」

「…嘘ばっかり。」

悪戯っぽく笑う彼女の余裕を崩したくて、先程よりも激しいキスをした。

はらりと落ちた腰のタオルを気にすることなく、続ける激しい行為は、優しいというのにはほど遠い。

それでも、お互いに甘い疼きに酔いしれ、快楽の海に呑まれる。

「ヒソ、カッ…、ヒソカ…ッ!」

「ッ、レイレ…!!」

愛しいと、離れたくないと。

不安も恐怖も打ち消して、お互いにただ夢中になって名前を呼んで、

もう、失わないようにと。

1人にならないようにと。


「…愛してる◇」

そんな奇術師の言葉を聞いて、彼女は柔らかい笑みを浮かべ彼の頬に手を伸ばす。

「ボクも、」

"貴方を愛しています"。

熱い口づけで返されて、同時に身体中に渡る熱い感覚に、声を漏らして、シーツを強く握りしめた。





こんなボクを、愛してくれる貴方を、


こんな嘘つきを、"好きだ"と囁くキミを、






…狂おしいくらい、愛してやまない。







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