『大好きな嘘』2
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「会いたかった…。」
耳元に囁かれる声、懐かしい声に涙が出そうになる。
「…どうして…?」
何故、彼がここにいるのか。
歪む視界。
こみ上げてくる感情を押し殺して、奥歯を噛み締めヒソカの身体を突き放す。
「何しに来たんですか…!?」
震える声で、俯いて後ろへ後退る。
自分のことを、ヒソカに漏らしたことなどない。
大方イルミが話したのだろう。
まさかあのイルミがヒソカに頼ってまで、ここに来るなんて…。
「…帰ってください。」
背を向けて、ヒソカから視線を外す。
それでも、その場から動かずに、こちらに向ける視線が、わかって、
「帰れッ!!」
荒くなる口調、そうして突き放すことしかできなかった。
「もう、うんざりなんですよ…。」
「貴方の気まぐれで、ボクの人生狂わせるのはやめてください。」
振り絞った声が、震えていないことを願う。
どんな嘘でもいい。
速くこの場から立ち去って欲しかった。
「…本気で、貴方の友達になったと思ったんですか?所詮暇つぶしですよ。少し気になったから近づいて、貴方を観察していただけです。」
違う、
「ボクはそういう図々しい人間なんですよ。飽きたから貴方からも、イルミからも離れた。」
違う…!!
「…清々してたのに、案外しつこいんじゃありませんか?」
「ボクは貴方のそういう所が嫌いです。」
違う、違う違う!!
自分でついてる嘘なのに、胸が苦しくなる。
口から出任せを言う度に、胸が痛くて、
痛くて、
「わかったら、さっさと「嘘ばっかり◆」
言葉を遮って、ヒソカはそう言う。
「そんなこと言うなら、どうしてボクと別れたあの時に、あんなことを言ったんだい?」
手放したあの時、距離を置いて、振り返ったレイレが言っていた。
「…『大好きでした』、なんて◇」
目を見開いた。
聞こえる筈のない距離だった筈なのに。
人混みに紛れて、聞こえないと思っていたのに、彼には伝わっていた。
彼女にとって大きな、誤算。
「レイレ。」
不意に腕を掴まれ、正面を向かされる。
「っ、」
見上げた彼の目が、いつもとは違う真剣なもので、直視するのが怖くて顔を背けた。
けれど、ヒソカはそれを許さず、彼女の顔を両手で包み込み自分の方へ無理矢理顔を向けさせる。
「…ボクは、気まぐれでここに来たわけじゃない。」
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