『大好きな嘘』2

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…彼女の死体をつまらなそうに見下ろしていた男はゆっくりと部屋を見渡す。

つい先程まで騒がしかった会場はしんと静まり返り、人影は、彼と目の前の執事のみ。

血だらけの死体を一瞥し、にこりともせず、彼はまだ体温が残っているであろう彼女の死体を踏みつける。

するとどうしたことか、ポンッと軽い音をたて、彼女の身体は消えてしまった。

「…驚きました。」

ヴァトラーは目の前のヒソカにそう漏らし、うっすら笑みを浮かべる。

「何故、偽物だとお気づきになられたのでしょう?」

全てを知っているであろう彼を目の前に、ヒソカはトランプを落とす。

「いくつか理由はあるけど、そうだな…。まず、いくら父親が主催したとしても、あのレイレが今日というこの日にこんな馬鹿馬鹿しいパーティーに出席する筈がない。」

相変わらず似合わない無表情さで、彼は続ける。

「自分に似せた偽物を作るのは、変化系能力者のあいつの力があれば別に不可能なことじゃない。ただ、その偽物を動かす為には操作系の能力を必要とする。レイレにとって、操作系は苦手な能力の1つ。だから、どうしても完璧に自分の人格を装うことは出来なかった。」

それに、

刹那、ビキビキッと鈍い音をたて、彼の顔が変形しだす。

流石に驚き目を開くヴァトラーは、徐々に露わになる彼の本当の姿に、その意図を理解する。


…目の前にいる男は、ヒソカではない。

靡く黒髪に、どこか掴めない真っ黒な瞳。

「…どんなに完璧に化けても、あのレイレが、オレとヒソカを見間違える筈がない。」

すっかり変わった声。

そう、今そこにいたのは、ヒソカではなく、レイレから直接招待状を貰い、パーティーに出席したイルミだった。

ヴァトラーの表情は一変し、険しいものに変わる。

用意が周到過ぎる。

正式にパーティーに出席し、ヒソカに化けて偽物の反応を伺い、正体を暴いた。

かなり精密にたてられたであろう計画。

ここに来てから考えたことにしては出来過ぎている。

「…いつから?」

いつから、彼女の企みに感づいていたと言うのだろうか。

「最初から。」

イルミはさも当然だと言いたげに、そう答えた。

「あいつがオレにわざわざ招待状を渡しに来たあの日から、違和感は感じてた。」




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