長編夢小説 『 Unusual world 』 

□『第2章』 2話 - 指定第9地区 -
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『梨花、ここは指定第9地区ですね』


「うん、そう・・。

それより、ハルカ。姿・・消せるんだよね?」


『はい、可能です。

正確には、『テラ』により実体化している身体を、

電子化し、思念体としてあなたの脳に移ると言うことになりますが』



突然の質問にも、このように正確な切り替えしをするあたりはさすがAIというとこか、

梨花は、そんなとこに少し感心しながら言葉をつづけた。


「あー。うん、それでさ・・。

ちょっと姿を消しててもらえないかな」


『・・・。はい。了解しました』


ハルカは、梨花の言葉に理由も聞かずに頷くと、

小さな光に包まれ、以前の小さな妖精の姿に変化した。





『これで、よろしいですか』


「うん」


梨花は、それを確認するとある場所へと静かに歩みを進めた。








さすがに顔パスというわけにはいかなかった。

梨花が住む指定第9地区で最大のビルを有する企業V-tecLife社は、

Play fun!48の開発元であり、今や世界に名だたる一流企業だ。




その本社は地区最大の繁華街の中心部にあって、

全ての道がローマに通ずるのと同じように、

第9地区の主要道路は全てこの企業に続いている。

四十年前の戦争以来、

一定以上の高さを有するビルの屋上には、

対空砲と地対空ミサイルの設置が義務づけられており、

この空を覆う程巨大な本社ビルにも針山のようにそれらがいくつも設置されている。

高層ビルと言うよりは、巨大な対空攻撃陣地のようだ。

七棟ものビルが一群となったそのうち、

頭一つ分飛び抜けて大きなビルに、梨花は無言で入っていく。







おい、あの娘はなんだ?

いや、誰かの知り合いじゃ?

しかし・・・。


スマートなスーツ姿の役員や社員が、

漆黒のパーカーにトレーニングパンツ姿でロビーを行く梨花に奇異の目を送る。





「・・戸賀崎智信に会いたいのですが」

その言葉に受付嬢はあっけにとられて彼女を見つめていた。

「総支配人に、ですか・・? 

あの、アポイントメントはございますでしょうか」

彼女は警備員に軽く目配せした。

いいからとにかく連絡をつけてほしいと梨花は頑なに主張した。

少々のごたごたの末、受付嬢はとまどいながらも宙に指を這わせる。

ユビキタス機能を利用して通信しているのだろう。

梨花には何をしているのかは見えない。





なんて横暴な・・。

総支配人と、どんな関係が?愛人かなにかか?

いや、しかしまだ幼くはないか。。

まぁそう言われればな・・、それにあの動きは義足か。

義足の少女か、不憫な。

いうな、事故かなにかであろう――。





周りの役員や警備の者たちは、支配人の愛人かなにかではないかと梨花眺めては、

よからぬ噂を本人に聞こえるか、聞こえないかの声でひそひそと話していた。



梨花は、そんな言葉を受けながらも、

ただ顔を伏せ、手と肩をかすかに震わせながら、

受付嬢の通信の会話を聞いて目を閉じていた。

ハルカは、そんな彼女の様子を彼女の肩の上から気にするように眺めていた。



「あの・・。」

そして数分後、受付嬢はいよいよわけがわからないという顔をして言った。

「総支配人がお会いになるそうです・・三分だけ。最上階へどうぞ」










‐ To be continued -
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