長編夢小説 『 Unusual world 』 

□『第1章』 外伝 - 義妹の寂しさ -
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『第1章』 外伝 - 義妹の寂しさ -











*この章は外伝のため、ストーリーの内容をよりわかりやすくするための補足の話として設定されています。

よって読まずに、

3話から4話へ読み飛ばしても話の理解に問題はなくあくまで補足のお話です。


*本作品の夢主の義妹「木崎 ゆりあ」の過去
のお話です。

外伝であり、本作品が始まる以前の話になります。




* * * * * * * * * * *
























あの時は泣いていた。ただひたすらに。








今から約2年ほど前であろう。

私はあの日、いつものように授業を終え、友人たちとこれから図書館に向かう途中だった。



「ゆりあっ!!」


そんな私を呼び止めたのは、元顧問の小嶋先生のこの一言だった。

いつも穏やかでゆるーくをモットーにテニス部の顧問をしている小嶋先生。

そんな先生が焦ったように私の名を呼び、

強引に戸惑う私を職員室横の応接間に引っ張って行ったときはただひたすらに戸惑っていた。

しかし、私をそれ以上に混乱させたのは、学校に入った私への母からの連絡であった。



「ゆりあ・・。いきなり引っ張ってきちゃってごめんね。」



「いえ、大丈夫です。

それより、あ、あの?せんせー達。どうしたんですか!?」


応接間についた私は、ただ悲しそうな表情を浮かべる小嶋先生や周り先生達に困惑するばかりだった。



「ゆりあ・・。あの・・落ち着いてきいてね―――――――――――」




「・・え。。」



そこからの記憶はあまり定かではない、

ただ泣き崩れた私を、落ち着かせるように先生が何かをいっていたような記憶が薄らと残っている。









電話の内容は凶報であった。


父と姉、弟が乗った車が交通事故にあったという。

父と幼い弟は即死。姉も重症ですぐに病院に運ばれたが、病院につく手前で息を引き取ったという。

ぶつかったのは大型のトレーラーで、運転手はどこで手に入れたか定かでもない非合法の薬物を使用しており、

精神不安定の状態で車を運転していたそうだ。








話を聴いた時、それは初めての感覚だった。

頭の中が真っ白になり、ただその場に崩れ落ちた。






後に母さんにあった時も、私はただ母さんと同じように何も言わずに、目元に涙を浮かべ泣いた。

病院で動かなくなった大好きな姉の手を握り、ただひたすらに泣いた記憶も新しい。








ただ、あの日から、私の『 あたりまえ 』の生活というものは壊れてしまった。




友人や多くの先生たちも、私の家のことを知ると憐れむような目でみつめ、かける言葉を失うのだった。

私は当初そんなみんなの目線に耐えきれず、しばらく学校も休んだし、外にでることにも抵抗を覚えた。

そして、街の電子化された広告さえもが音を上げ私を、憐れんでいる。

そんな気持ちにさえ取りつかれた時期があった。

顧問の小嶋先生に、担任の松井先生、それに友達達が心配して何度も来てくれたが、

最初の方は人と会うことさえできなかった。






しかし、家にいれば、心が落ち着くというわけではないのもまた事実だった。


5人でくらしていた家は、私とお母さんだけで暮らすにもあまりに広さを感じ、

それがまたなんともいえぬ空虚感を私達の心に植え付けた。


ただ、部屋を歩いているだけ、

主無きリビングのイスを眺めるだけで自然と涙がこみ上げてくるような。

そんな生活だった。


母もまたあまり表には出さないようにしていたが、

時折夜、自身の部屋の中で泣いてたようで、

家族を失ったあの気持ちを少し落ちつかせるだけでも、

事実結構な時間を有しただろう。











事故から少し時間がたったころ、学校にもやっと顔を出すことができるようになってきた。

まぁいわゆる保健室通いというやつで、直接教室に顔を出すことにはまだ些か抵抗が大きかった。


しかし、学校から帰ると仕事で帰りの遅い母はおらず私は家に一人だった。

寂しくて、寂しくて・・。

家の中でもただひたすらにいつも自分の部屋の中に閉じこもっていた。

同じ家の中でも、姉や弟の部屋だった場所には、悲しさを思い出してしまうようで、

どうしても近づくことができなかったし、

ただっぴろいリビングにいるだけでも、自身の心細い気持ちは紛れなかったためでもある。




そんな生活を続けて次第にやせ、元気をなくしていく娘を見かねてか、

母は遠方に暮らしていた、祖父や祖母を説得し家に呼んだ。

最初は驚いたが、母や祖父たちの気遣いは本当にうれしかった。



「ゆりあ、おかえり」


「た、ただいま」

おじいちゃんやおばあちゃんは、娘の私のことをとても気にかけてくれた。

毎日帰ってきた私の頭をなでては学校であった出来事を楽しそうに聞いてくれた。

そんなことがあり、寂しさは次第に薄れていった。

しかし、どうしても心の奧に以前のような暖かな気持ちがわき上がることはなかった。










そしてある日、そんな日々にも変化が訪れた。


「ねぇ、話ってなに」

「・・・ゆりあ、母さん。・・再婚しようと思うの」

「・・再婚!?」

「いい人だし、その人にもあなたと同い年ほどの娘がいるらしいのよ。」


「でも・・・。」


ある日、お母さんは、私にこんな話を話した。

まだ、父さんたちが事故でなくなってから2年も経たない頃であった。





家族を失った寂しさを紛らわすためなのか、なんなのか。

ある時唐突に再婚すること決めた母。



それに対して、

おじいちゃんやおばあちゃんは、「まだ早いんじゃないか?」と反対したが、

母は「決めたことなので」と何を言われてもこの一点張りであった。



再婚相手のお父さんは、それほど私はいい人に思えなかった。

なんというか、機械のようなそんな人にも私は時折感じた。


でも、義理の姉妹であっても同い年ほどの家族が増えるというのは、

嬉しかった・・・・。


それに母の再婚相手のお父さんが見せてくれた、

その人の娘さんの写真が亡くなったお姉ちゃんにそっくりなのも驚いた。






いままで会ったこともない人に興味を示した事などなかったのに・・。



そしてその人は亡くなったお姉ちゃんではないとわかっているのに・・




写真を見たとき、どんな人であっても私はその人に会いたいと思った。

会って、どんな話でもいいから話をしたい。


そう・・。あの頃みたいに・・・。







「桜汽 梨花・・さん?」









この時初めて、心の中でくすぶっていた寂しさにどこからか暖かな風が吹いた気がした。













‐ fin -

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