長編夢小説 『 Unusual world 』
□『プロローグ』 1話 - 排出者 -
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『プロローグ』 1話 - 排出者 -
「あ、雨ふってる・・・」
いつの間にか降り注ぐ小さな雨粒が奏でる合奏が、私を取り囲んでいた。
月曜の朝、雨模様の灰色の空、憂鬱なため息が漂ってきそうな、駅のホーム。
憂鬱そうな顔が並ぶそこに、私は立っていた。
高校に向かう電車が来るのはあと3分後。
スーツ姿のサラリーマンや、学生服の人群れは、
雨粒で真っ白に染まった軌道の先に目を凝らしながら、
早く来て欲しそうな、このまま永遠に来ないで欲しそうな、ため息一歩手前みたいな表情をしていた。
ごった返すそんな人々の間で、私は灰色の空がこぼす雨粒の音に耳を傾けていた。
雨音って、好きだ。
雨の日は癖毛が酷くなるし、
電車の中のにおいもなんだか表現しようのない嫌なにおいになるし、
濡れるのだって嫌だけど、こうして駅のホームで聞く雨音は透明で、きれいだ。
皮膚を通り抜けて、
体の芯の方を静かに揺さぶってどこかにふっと消え去ってしまうような、
そんな透明な音。
イヤホンをしている苛立たしげな女子高生や、
耳に押しつけた携帯電話に頭を下げているサラリーマン、
それに煙草をくわえた中年男の群れが、
向かいのホームでせわしげに時刻表の並んだ電光掲示板を見あげている。
何かの事故で電車が遅れているらしい。
皆、一分一秒にいら立っている。
私はなんだかぼぅっとした頭で、
雨の音でも聞いてればいいのにと思った。
向かいのホームに並ぶ、
苛立たしげな顔、顔、顔、それに、
・・・ガスマスク・・?