俺は友達が少ない
□闇鍋=毒物
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「あ、だったらあたし闇鍋がいい!」
「却下、オチが見えている」
星奈の提案を即座に蹴る
このメンバーで闇鍋はマズいだろう…
「まぁ良いんじゃないか?闇鍋」
小鷹は乗り気だ、ちくしょー裏切り者め!!
「わたくしもやみなべと言うものをしてみたいです、おおあにき」
幸村のキラキラ視線は高威力な為無視
「ククク…兄上よ、何故にそう闇鍋を拒むのだ」
「私も闇鍋したいぞ!!」
小鳩とマリアまで賛成派な…困ったなぁ…
「理科も闇鍋と言う物には興味があります、真っ暗に染められたスープ、それを攻める様にグツグツと煮込む鍋!!この場合やはりスープが受けで鍋が攻めですよね!!」
こいつは無視だ、てかそもそも闇鍋は黒いスープなど必要ないと思うのだが。
「…はぁ、わかったよ、じゃあ闇鍋に俺も賛成だ」
そう言った俺の言葉に、みんなはバカみたいに盛り上がった、どんだけ楽しみにしてんだよ、闇鍋。
まぁ、その後も家庭科室以外で火を使う事を禁止する校則を乗り越える為理科が『火を使わなくても食べ物が煮られる土鍋(によく似たハイテク土鍋) 』を製作したり、小鷹が闇鍋を少し勘違いして真っ暗なスープ作りに精を出したりと色々な事があった。
そして週明けの闇鍋パーティー当日、理科の持ってきたハイテク土鍋を使って小鷹が黒いスープを作り、部屋を暗くして各々が持ち寄った食材をいっせいに鍋にぶち込み、いよいよ闇鍋パーティーが始まった。
で、現在。
小鷹が苦労に苦労を積み重ね作った黒いスープはえもいわれぬ異臭を放ち、見た目は同じ黒色でもなにかヘドロっぽい感じがする別のものに成り果てていた。
みんな楽しそうにしていたのはスープに具材を入れるまでで、魚介類をベースにした美味しそうな匂いが臭いに変わり全員の顔(特に俺と小鷹)から笑顔が消えた。
しかも闇鍋一番手は不幸にも俺からだった、震える箸で具を掴み、一気に口へ放り込む。
当然、三途の川は見えた。
それからと言うもの、マリア先生と小鳩の年少組は開始十分でダウン。
特に仲の悪い夜空と星奈は、
「貴様が闇鍋などという頭がおかしなものをやりたいと言うから……!」
「そもそもあんたが鍋をやりたいなんて言い出したのが悪い!」
「最悪なのは貴様が持ってきたシュールストレミングだ!」
「ニシンだから味は悪くなかったわ。それに比べてあんたのマンゴーや苺だいふくは!」
…こんな感じで責任を押し付け合う始末だ。
いつの間にか『最後まで生き残っていたやつが優勝』という闇鍋らしからぬルールが生まれていた。
そして今、幸村が逝った。
「ほら、早く食え凌」
「お前もな夜空」
…正直、もうこれ以上口には入れたくないのだが。
あ、今度は理科が逝った。
…やっぱり、俺の言った通り、闇鍋なんて本当に気心の知れた友達同士が和気藹々とやるものだったんだ。
和気藹々などという雰囲気とはほど遠い俺達が手を出していいジャンルじゃなかったんだ……。
しかもうちの部員は悪ノリだけはプロ級だからな、闇鍋に入れる具材は果物だの納豆だの(納豆は俺が入れた)確実にアウトなものばっかり。