シンドリアの戦士

□序章
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静かに!!

………この船は大シケにぶつかったらしい!しばらく船が大きく揺れる!

危険だから大人しく席に座っているように!!」

「センセー 沈むんですかー!?」

「タイタニックー」

「お前達が大人しくしてたら沈まん!」



ざわざわと騒ぐ同級生達の声は不安と興奮が織り交ぜられていてとても大きい。

しかし、それ以上に外から叩きつけられる荒れた海の音の方が大きく、ぐらぐらと空間を揺らす。


そんな中、私は、





「ねぇ………、怖くないの?」

「別に………」

「うっわ! こんな時も読書ー? 沈むかもなのにー!」

「そん時はそん時」


私はパラリとページを捲る。


まぁ、本音を言えば今すぐ甲板に出てこの大嵐を体全体で体感したいのだが、
そんなこと絶対に大人が許してくれないので大人しくしとくしかない。


しかし同級生は私に絡むことで不安と不満を紛らわせたいらしく、いつもよりもしつこかった。


「ねぇ、今は何読んでんのぉ?」

「千夜一夜物語」

「ぶっは!難しそー!
何ソレ古文ー?」

「ううん、どっちかって言うとアラジンと魔法のランプ系の方。

まぁまぁ面白いよ」

「へー…」


興味なさそう、というよりつまらなさそうな生返事。


この嵐に私が怯えて少しは弱みが握れるとでも思ったのか。

ザマァ。


「あっ、じゃあさ、海神様の話し知ってる?」

「海神様?」


私が顔を上げるとようやく相手にされたのが嬉しいのか笑みを浮かべて同級生は話しを続けた。


「うん、今から臨海学習に行く島には伝説があるんだってー。
ネットで調べたんだー」


ほう、面白そうだな。


「その島って昔から嵐が来ると大きな龍が海からやって来るんだって。

それでね〜」


同級生はそこで言葉を切った。
周りの取り巻き達がクスクス笑う。

彼女はたっぷり間を開けて口を開いた。


「その海神様に生贄を捧げると嵐が晴れるんだってー!

だからさー」





今すぐ海に飛び込んでよ











あははっ、クスクス、あはははは。


周りが嫌な笑いに包まれる。



ああ、なんて気持ち悪い笑顔だろう。


私は表情を変えず本に向き直る。


 
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