バルバットの医師
□序章
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―――その日、二人の少年が泣いていた―――
深夜、様々な植物が覆い茂る庭園。
その中にある小さな噴水の縁に、一人の少年が腰掛け、声を押し殺して泣いていた。
「うっ、ううう、うわぁあああ……………っ!」
その大きな瞳からぼろぼろと流れる涙を拭う少年に、一つの影が近づく。
「どうか………なさいましたか…………?」
「あ………」
夜中で、まだ相手は誰が居るのか分からないのだろう。
おそるおそるといった風に茂みをかき分けてそばに来たのはいくらか年上の少女だった。
少女は泣き声の主が誰だか分かると表情を緩め、少年のそばに静かに屈み込み、そっと頭を撫でた。
少年も相手が誰だか分かると慌てて泣き止もうと歯を食いしばった。
しかしそれも長く続かず、すぐに涙腺を緩ませると少女の胸にしがみつき、ただ、ただ泣き続けた。
少女はそんな少年を愛おしそうに抱きしめ、泣き止むまでずっと、その背中を優しく撫で続けた。