時間と角砂糖。

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……

「ハァ、ハァ」

どれだけ走り回っただろうか
すでに息は荒くなり、ズキズキとかかとが痛みを伴っている

「っ、まだ大通りに出ないの?」

あれだけ走り回っているのに一向に大通りは見当たらない

それどころか

「おぃ!そっちにいったぞ!」

「回り込め!蜂の巣にしろ」

走れば走るほど、そんな声が大きくなっていくような気がして、私は無意識に耳を手で覆ってみせた。

(どうしよう、このままじゃ)

(だれか・・だれか・・たすけ)

「おい」

「!っ」

不意に声をかけられてビクリと体がはねた

その声のほうへ、鉛のように硬くなった体を向ければ

「おまえ、なんだ?敵か」

「あ・・私は」

「たく、めんどくせぇな、殺すか」

「!!」

黒服の、いかにもといった男はそう言うと
私の頭にカチリと黒光りする拳銃を向ける

前のように、助けてくれる存在もいないこの状況の中
動くこともどうすることもできない私は
ただただ、冷や汗を垂らすことしかできない

(さすがの私も、拳銃にはかなわない
 もし、ここから逃げたとしても後ろから
 きっと撃たれる)

(もぅ、終わりなのかな・・)

すべてを覚悟してすっと目を閉じる
せめて、せめて
最後に姉さんに会いたかった
そぅ思いながら弾丸をこめる音を聞いたときだった

ダァンッ

「優愛!あんたこんなところで何してんだよ!」

「エリ・・オット」
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