時間と角砂糖。

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ーーーー人はどうしようもない絶望にあった時
自然と笑みがこぼれる生き物らしい

「あ・・はは」

さっきから、落ち続けてどれくらいの時間がたっただろうか
もしかしたら、そんなに経っていないのかも知れない
だけど私にとって落ち続けているこの時間は、
一生分とも言えるほどに長い時間に思えてならなかったのだ

(こんなことになるなら、姉さんにありがとうって伝えておけばよかったな)

(あの人にも、自分の気持ちを伝えて・・・
嫌、もぅ遅いか)

ふと、嫌なことが思い浮かんでそれを打ち消す

隣で、私を誘拐した男はというと、
「だるい・・早く紅茶が飲みたい」と呟いては、心底だるそうに平然と落ち続けていた

「っ〜何なのよ!もぅ」

「どうしたんだ、お嬢さん?まだ着いてもいないというのに」

「どうしたもこうも、貴方は誰なの?なんで
こんな事・・」

「あぁ、それなら・・着いてから話そう」

そういって彼が見た先(といっっても下)
には、まるで外国を思わせるような建物が
いくつも並んでいる

こんな所に落ちるのかと思うとゾッとしたが
次の瞬間
私の体におきた衝撃は、激しいものではなく
フカフカのソファにジャンプしたような・・
そんなやわらかい感触だった

(い・・生きてる、よね)

体をあちこち見回してみるが、特に目立った外傷はない

なんとか生きていたことを確認したのもつかのま、私はこうなった原因の男
もとい帽子男(今命名した)を思いっきし
睨み付けてやった

「返してよ!姉さんの元に、家に返してよ」

「それはできないな」

呆れた、といわんばかりの顔で彼はそうはき捨てる

それでも噛み付くように講義すれば
「そういえば、自己紹介がまだだったな」
といい、被っていた帽子を取っては恭しく一礼して見せた

「私はブラッド=デュプレ、帽子屋屋敷の主だ」

「帽子屋・・屋敷?」

「今はまだ、それくらいでいいだろう
・・・・今は、な?」

何かを含んだような言い方がやけに気に入らなかった

だけど、これ以上何を聞いたところで散々私のことを無視してきたこの男が、今更何か言った所で聞き入れるとは思わない

「さて、残念だがそろそろお別れの時間だ
早くしないと、お茶会の時間に間に合わなくなってしまうからな」
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