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□君を好きになりたかった
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例えば俺が大きく道を外れることなく順風満帆だったとして、そしたらこんなに強くバスケに対して愛情に似た感情を抱いたりすることはもしかしたらなかったかもしれない。
例えば今俺が天狗になることなく上を目指していられるのは、俺があの時間をひどく後悔していて、もう二度とあんな無駄なことはしないと硬く心に誓ったからかもしれない。
俺が、先生や仲間(と言うほど仲良しでもねーが)のために死ぬ気で試合中にプレーできるのは、もちろん勝ちたいと思う強い気持ちがあるのが大前提だが、死ぬ気でプレーすることが俺が先生やあいつらにできる贖罪のような気がしていて、結果としてそれが勝利に繋がる要因のひとつになっているのかもしれない。
つまり、馬鹿らしいほどポジティブに考えれば、無駄だとしか思えないあの時間は実はあながち無駄ではなかったのかもしれない。

と、ようやくそう思えるようになったのはあいつのおかげだったりする。



俺がミニバスを始めた時、親父から初めてマイボールを買ってもらった時、初めてスタメンを獲った時、初めて試合に勝った時、負けた時。
それからキャプテンになった時、全中で優勝した時、湘北に入学した時、入院した時、こっそり病院を抜け出して練習をしていた時、バスケから遠ざかった時。
全てを捨ててバスケ部に復帰した時、復帰戦、ブランクを感じてガラにもなく落ち込んだ時。
気付けばどんな時もあいつが側にいた。
優しい言葉をかけてくれるわけではなかったけれど、むしろ厳しい言葉を投げられることもあったけど、とにかく俺の側にはあいつがいた。


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