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□under the sun 2
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「あら、お見舞?」
病室の入り口でうろうろしていたあたしに、やたらと声の高い、中年の看護士さんが声をかけた。
「いえ、あたしは…」
曖昧に答えたあたしににっこり笑った看護師さんが病室を覗き、
「三井君の?」
と尋ねる。はぁ、とまたしても曖昧に答えたあたしを見て、
「三井君、お見舞よ」
と、病室の三井に声をかけた。

三井はというと、まるであたしの事など知らないみたいにこちらを一瞥しただけで、何も言わずにまた窓のほうに視線を向けた。
あたしはそのまま立ち去るわけにも行かず、看護士さんに軽くお礼の会釈をして病室に入った。
ベッドの側まで近づいて三井を見ると、腕にもガーゼや何やらが貼ってあり、湿布の匂いがした。

結構派手にやったんだな、と思った。



「…久しぶり」
「………」
「怪我、大丈夫?」
「………。」
「入院、どれくらいするの?」
「………。」
「ちょっと三井、何とか言っ」
「何しに来た」
「っ…」

低く響く声だった。
相変わらず視線は窓の外にあったけれど、何も寄せ付けない、そんな雰囲気を纏っていた。

「何って…」

後先考えずに、まあ何とかなるだろうと行動するのはあたしの悪い癖だ、この時ほどそう強く思ったことはない。
実際、ここに来てみれば何とかなるかもしれないという甘い考えがあった事は否定しない。

三井がいくらやさぐれても、中学校の頃の三井を知っているあたしにはいまいちピンときていなかったし、あんなに仲が良かったあたしにはもしかしたら心を開いてくれるかもしれないという自惚れもあった。

でも、目の前にいる三井の目は冷め切っている。心は固く閉ざされている。



「あの、三井…」
「帰れ」
有無を言わさぬ一刀両断。
あたしはこんな冷たい三井を体験したことがなかった。
ショックだった。
心臓が早鐘を打っている。体がこわばってうまく動かない。
頭もあまり働いていない、働かない。目の前にある現実が、うまく理解できない。


あたしと目もあわせてくれない、目の前でベッドに横たわっているこの男は、本当に三井なのだろうか。


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