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□make progress
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「三っちゃんも喧嘩すんだな」
意外そうに徳男が言った。

俺達は、駅から少し離れた小さな公園のベンチにいた。俺達は、というより徳男がついてくるのだ。
俺は、初めての本気の殴り合いでパンチを何発かもらい、足腰がまずいことになっていた。
そんな情けない自分にもなぜかついてくる徳男にもさっきからズキズキ痛む拳や頬や鳩尾にも苛々した。とにかくさっさと一人になりたかったがいつまで経っても徳男がついてくる。

埒があかないので、知るかと思ってベンチに腰掛けたら徳男も隣に座った。

「うるせえよ。お前には関係ねえだろ」
俺は相変わらず苛々していた。
「あのままだったら警察沙汰だ。俺みたいなのは別に困らねーけど三っちゃんは違うんじゃね?」
「知るかよ。俺がどうなっても別に誰も困りゃしねえよ」
「…何かあったのか?」
「お前には関係ねえ」
「まあそうだけどさ」
それきり、会話が途切れた。
俺達は、並んでただベンチに座っていた。


*


「おい、いたぞ!あいつだ!」
どのくらいそうしていたかは分からない。
遠くから野太い声がしたので顔をあげると、見たことのない奴らが四人、どうやらこっちに向かってくるところだった。
「誰だよ、お前ら」
「あいつ、さっき三っちゃんがやった奴じゃねーのか?」
徳男が指差した先には、顔を腫らした男がいた。
「誰だよ。知るかよ。顔なんか覚えるかよ。」
俺の声が聞こえたのか、その男が
「てめー!ふざけんな!」
とこっちに向かって殴りかかってきた。
それを引き金に、他の奴らがそいつに続いた。

俺は相変わらず苛々していた。


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