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□狗
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「前島がゲイだってこと、お前知ってたのか」

薄暗い教室。
自分の席に座りながら、教壇に立つ先生の質問に頷く感覚はまるで授業をうけているようだ。
ただ、もうすぐで5時を回るというのに電気も付けられず薄暗いままなのと、
生徒はたった一人、俺のみという点を除いて・・・だが。

「お前は相談を受けていたのか?」
「先生、俺ねバイなの。」

シレっと言ってみる。
バイなんて別に大して問題にもならない。
同性である男もいけるが、それはただいけるってだけなわけだから別に普段の生活に支障はきたさないし、
別にバイだからといって何か困ったことが起きているわけでもない。だって正常者(ノーマル)と同じように女だって抱けるんだから。


「なんかさ、確かにバイとゲイって同じように見えて全然違うようなものかもしんないけどさ、
でもやっぱり同じ性別を愛すって点においてはまったく同じなんだよね。
んま、つまり俺は同じ匂いを前島に嗅ぎつけたってわけなんだけど・・・わかった?せんせ」

「ハハ、Ok!ok!川津、お前が前島の秘密を探り当てたのは偶然にして必然だったってわけか」

「んー、まあ小難しく言うとそうなんのかな?俺バカだからわかんねーけどさ」

ガタ、と椅子から立ち上がる。
教室はカーテンで閉め切られている。今日の掃除係は誰だよ、ちゃんとまとめて帰らなきゃ次の日ハスミンがプンスカ怒るぞ。
カーテンをめくってわざわざ外を眺めるのもなんだかダルいので先生がいる教壇へ足を向け歩き始めた。

「今の世の中正常者(ノーマル)が異常者(ゲイ)をそーいう目で見ることくらいわかるからさ。
ねえ、そんなペラペラ話せることでもないじゃん。つまりさ、俺が言いたいのはね」

教壇の上に立つ蓮実先生を見上げる。
なんだ、言ってみろ。と笑う先生はまさに熱心で生徒の味方と言える存在なのだろう。
俺はどうもいけ好かないけども。

「先生にその気はなくとも、もしかしたらそーゆう素質が眠ってるのかもね」

いや、ただ単に勘がいいだけのやつなのかもしれない。
・・・きっと、そうなのだろう。一見普通に見える前島だが、蓼沼の行き過ぎた暴言やら前島のなよなよした性格だとか身体を見れば勘がいいやつらはきっと、もしかしたら気が付くかもしれない。
可能性は0ではないのだ。さらにあの蓮実だろ?
んまあ・・・その件に関しては、だが。

「はは、そーいう素質な。考えたこともなかったよ」

「馬鹿にしないでって・・・案外、俺の(そーゆう)勘は当たるんだから」

「そうかそうか、自分のことはわかっていたつもりだったんだけどな。
でもな、俺は女の子大好きだぞ?」

ニコリと笑う先生にああ、ボロ出ちゃったんじゃないの?と心の中で嘲笑う。
まあ俺の目的そっちじゃないから。別にいいんだけどね。


「なら、なんで」

驚いたように目を丸めて息を詰める先生の顔へ口を寄せて笑う。

「先生は俺をそんな目で見てるの?」

もしかして、気が付いてないの?
間抜けな顔を晒す先生を指差して笑う。はは、こんな阿呆面、生徒に見せていいのかよ。
すぐに取り繕うように笑顔を張り付ける蓮実聖司にピューと口笛を吹いた。

「俺、鼻が利くんだ」

カラリと笑って、結局一言もなにも言い返せなかった蓮実をおいて教室を後にした。



(綺麗な欲の色をしていた)
(なんの混じり気もない)
((欲の色))


END

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