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□苺唇
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「ハ・・・スミ、っぅ・・・」
首筋に残った赤い痕スルリと撫で上げればビクンと震える細い体に目を細める。
うるんだ瞳で必死に俺の首へ抱き着く和紀は微かに震えていて。
「っ・・・ぅ、っはすみんっ、・・・け、すけが・・・けえすけがぁ・・・」
「・・・」
ボロボロと涙を流しながら声を、身体を震わす和紀をただ黙って抱きしめる。
けいすけ、とただただ一人の男の名前を繰り返す彼女は何も知らない、無知な少女。
ああ、なんてかわいそうなのだろう。
彼女の最愛の、世界でたった一人の弟は俺がこの手で、穴だらけにして、腕だって足だって顔だって原形のとどめない姿にして、そして最後には地面深くに埋めたというのに。
「・・・大丈夫、大丈夫だ。きっと今に見つかるさ」
「でもっ、でも・・・」
「大丈夫、大丈夫。圭介を信じよう、な?」
「・・・っ、ぅ・・・ん、」
ああ、なんてなんて無知で愚かな。
「はすみん・・・」
「ん?」
「・・・ハスミンは、どこにも行かないでね・・・?私を置いてかないで、」
「ああ。もちろんだよ、和紀」
窓からのぞく三日月が弧を描いていた。
END