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□君に見せたいから
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「んーっ!んーーんんっ!!んんぅーぅ!」

「やだっ、やだっやだ、けいすけくんっ!!けいすけえ!けいっ、やっ、あっ、!!!」

目に溜まった大粒の涙が冷たい床にポトリと落ちて行く。
とめどなく流れ落ちる涙と喉からがむしゃらに発せられる叫び声も、動けない身体ではなにもかも無駄な行為として終わってしまうのか。
目の前の少女のぐちゃぐちゃになった顔に笑みをこぼした。


「no…ちよっと声が大きいな。静かに。」

しぃ。と彼女の頭を撫でて宥めようとするが彼女の視線がこちらへ向く様子は見えない。
彼女の視線は変わらず早水圭介に向けられたままで。なんだ、本当厄介な者に見つかってしまった。
まだ、彼女は殺したくないのに。

「…そうだ。静かに。君は出来る生徒だろう?」

「ふーっ、ふ、っぅ…ぁ、っう、う…」

「そう…そう…。…いい子だ。君が騒がなければもっと穏便に済ますつもりだよ、ね?わかるだろう?」

「っう、ひ…っぅ…ぅっ、ん、ハスミっ、ぅ、はすみんっぅ…っぁ…っぅ」

嗚咽を漏らしながらコクコクと必死に頷き、請うように俺を見上げる和紀にドクリと心臓がなる。
いいねぇ、その目。大好きだよ。
嗚咽を必死に押し殺す彼女の頭を優しく撫でてやる。そう、君は黙って見ていればいいんだ。

「ふーっ、ふーっ…ぅ、っーふ」

「さあ、圭介。続きを始めようか」

離していた半田ごてを圭介の目の前にちらつかせる。
そうすれば汗と涙でぐちゃぐちゃの圭介は体を強張らせた。目の前に愛する彼女を置いて、彼はなにを思うのか。
反対に、彼女は愛する彼氏の危機に何を思うのか。
半田ごてを圭介の鼻っ面に押し当てる。嫌な匂いと圭介の声にならない叫び声が、心地よく暗い教室に響いた。


「っ、け、ぇすけぇえっ、け、けいっ、けえすけ、けいすけえっ!!やっ、けえっすけ、けえすけ!!」

なにより、彼女の叫び声が一番心地よかった。


END

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