修行

□06.ガラス越し
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紫音はそれから、救急車で病院へと運ばれ、一命をとりとめた。
だが、紫音は目を覚ますことなく、ずっと昏睡状態が続いていた。

俺はただ、見守ることしかできなかった。
車にはねられる直前の紫音の言葉の意味を黙々と考えることもあった。
"『リョーマ、私のこと好き?』"
こんな言葉を紫音から聞くとは思ってなかった。
言葉を言った背景には、俺の紫音への態度とかが影響してると思う。毎日テニス三昧で、紫音と過ごした日なんて数えるほどしかない。一緒に過ごしても、言葉はあまり発しないし、甘い言葉などもってのほか。それにあまり感情を表に出さない方だから、相手に誤解されることもある。

そういうことを延々と考えながら、紫音を見つめた。
紫音は俺に気持ちを告げた時、どんな気持ちだったのだろう。

「紫音…」





数日後、紫音は普通の病室に移された。
それから俺は、毎日部活後紫音の病室へと通った。

「紫音…」

紫音はテニス部のマネージャーだったから、時々先輩方もお見舞いに来た。

それでも紫音は、目を覚ますことはなかった。



《END》
→指先の体温に続く。

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