短編小説
□ハロウィン
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「トリック・オア・トッリート!」
いきなり投げかけられた言葉に優樹は目を点にした。
「なに?」
望美はにこにことしながらせまってきた。
「もしかしてお菓子持ってないの? じゃあ、いたずらしちゃうよ」
そう言いながら、望美はがばりと襲いかかってきた。
「っちょっと! いきなり……っあはははっ!!」
わきに触られ、くすぐったさに優樹は大声をたてて笑った。
「やめっ……ふふっちょっと……やめんかっ!!」
ばしっ! と優樹は思い切り望美の頭をはたいた。
「……ひどい優樹……本気で叩いた……」
乱れた息を整えながら優樹は距離をとった。
「望美こそなにやってるの……いや、ハロウィンの真似事だってことはわかったけど」
「なんだ、わかったなら何も叩かなくてもいいのに」
「……そりゃあれだけやられれば叩きたくもなるよ」
望美は頭をさすりながら再び笑顔になった。
「さて問題です。今日は何の日でしょう」
「愚問。ハロウィンでしょ」
「はずれ。ハロウィンの二日前でした」
「…………」
優樹は無言で望美の頭上に手をかざした。
「やめてよっ本当のこと言っただけで叩くなんて反則だよ!」
「ハロウィンでもないのにいたずらするのはどうなの」
「予行練習」
優樹は無言で望美めがけて手刀を落とした。