黒蝶はつがいの風にのる

□おいでませ
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「それは……当然わかりますよ。君は、毎晩、毎晩……いいや、違いましたね。毎朝毎朝毎朝毎朝。
将臣。将臣? 将臣!? 将臣っ!! ……っと、ひどく将臣くんを求めているようでしたから。本当に、安眠妨害も良いところですよ」


……いやあ、弁慶さんって以外と演技派というか、こんなに感情込めた表情とか言い方ができるんだなあ。

なんて関心している場合じゃない。


「す、すみません。そんなに寝言が大きかったなんて思わなくて。
もしかしてそのせいで弁慶さん今日機嫌が悪かったり……」

「君、それ本気で言ってますか」


言いながら、ぐ、と優樹は押し黙った。
……優樹も実はもしかしてと薄々わかってはいた。……もしかして嫉妬してくれていた?


「……何を笑っているんですかねこの子は」


頬をつままれ「痛いです……」と訴えながら、やはり優樹は顔がにやけるのを止めることができなかった。


「……そんなに君は将臣くんのことを想っているんですか」

「それ、本気で聞いてますか」


お返しとばかりに聞き返すと、男はいたずらにふっと笑った。


「……ええ、本気で聞いてますよ。僕は嫉妬深いものですから。
君との夢の逢瀬を狙う輩がいたら呪詛を飛ばしてやろうかと思うくらいにはね」


……将臣、すまない。薄荷か何かを使って護身して。



『――脱がせたい、ってことだろ』



突然、最後に将臣が残した言葉を思い出し、優樹は顔を赤くした。



ああ……将臣さん、将臣さん……なんてこと言い残してくれたんですか。



優樹がそうやって意識するのは……想っているのは、この世界でたった一人しかいない。


……と、この世界だけじゃない。……全世界でだ。


心の中で訂正しながら、優樹ははにかんだ。




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