お題作品

□異形退治
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 平安の頃とくらべて減っているかと聞けば、彼女はそうとは限らないと答えた。
 なにがって?
 闇に紛れてひとに仇をなす妖関連だ。
 
 
異形退治――
 
 
「一応巫覡だけど、わたしって妖退治に参加して大丈夫なの?」
 緋焔に頼まれ京の町に増えた異形を片づける手伝いをしていたちづは、思わずそう呟いた。無理もないだろう、理に縛られひとを斬ることもなく、さらに末席とはいえ神である緋焔とは違い、ちづは必要とあらばひとを斬る。もうこの手は数えきれないほど血に濡れてきたのだ。
 そんな自分が巫覡を勤めていること事態異常ともいえる。墨染めの水干と袴は緋焔が用意してくれたもので、こういうときにしか使わないが闇に紛れるので非常に助かっている。手伝いの間浪士に絡まれて腰帯の小太刀を抜くことも少なくなった。
「オン、アビラウンキャン、シャラクタン!」
 鋭い詠唱とともに放たれた霊力の刃が異形を切り裂き、徒人には聞こえない断末魔の悲鳴をあげながら消滅したのを確かめて次へ向かう。とはいえ、何度も遭遇するものではない。
 平安の頃はひとを惑わし、ひとを食らい、直接仇をなすものが多かった。だがいまとなってはそんな直接的なものは減り、逆に成仏できなかったがゆえに異形となったものもちらほらいる。もちろん、怨みを持ったまま死んでしまい怨霊となるものは減ったとはいえないが。
「あー、後は雑鬼みたいな無害なものとか……」
 時々遊びにきては千鶴の話相手になったり、気に入った幹部にちょっかいを出したり、物の怪と一緒になって伊東に攻撃をしかけたりとかなり楽しんでいる。いや、最後のは止めるこちらの身になってほしいのだが。
 そんなことを考えながらも、ちづは京にあふれる異形を少しでも減らすべく裏路を駆けるのだった。

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