望んだ事はB

□望んだ事は
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「カイト!私の望みは、るるるを元の世界に帰すこと!」

お願い、叶えて!
奮い立たせるように、叫んだ。

「!」

瞬間、突如渦巻く風が生まれた。
ぐるぐると枯れ葉が円を描く。

「きゃっ!」

小さな驚きと共に、るるるの足が浮いた。

「俺ともお別れだ、七瀬」

「カイト・・・」

見れば、彼も浮いていた。
風神の力。
今となっては過去の話。
使えた頃を思い出す。

「君の笑顔を願ってるよ」

そう言ったのか、頭の中に語りかけたのか、七瀬の頬に軽くキスをする。
そして、音もなく姿を消した。

「カイト!自分だけ何普通に消えてんだっ!!」

余韻に浸ることさえ許さない、るるるの悲鳴にも似た嘆き。

徐々に高さを増し、ふわりふわりと舞い上がる。

「来たのが落下なら、帰るのは浮上かよーーーっ!」

涙目で抗議。
もう、カイトはいないけどね。

「るるる!」

「七瀬!」

時間がない。
見上げる高さのるるるを見つめる。

揺れる七瀬の瞳。
不安じゃない。
ただ、寂しい。
それだけを物語る。

そして、るるるの瞳。
それもまた揺れていた。
そんな七瀬の目を見るまでは。

「七瀬、教えてあげる」

そう言った彼女の瞳は、不敵で余裕すら感じるいつもの目になっていた。

七瀬は悟る。

るるるの『知ってる』時の目だ。
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