望んだ事はB

□望んだ事は
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「なんか素敵でしゅ〜」

おシゲちゃんがポツリと言った。
すると、

「「「ほんとよね〜っ」」」

胸の前で両手を握っているくのたま達。
ため息がもれた。

「き、気障な奴だっ!」

「顔が赤いぞ、文次郎」

仙蔵がからかう。

「留さん・・・」

「どうした、伊作?」

い組の二人を笑って見ていた留三郎が、同室の親友に視線を向ける。
その瞬間、いつものように照れた笑いをした伊作。

「なんかさ、綺麗だなって思ってさ」

「・・・ああ、そうだな」

その容姿は言うまでもない。
後ろに見える見慣れた夕焼けさえも、今日は神懸かっているほど美しく感じる。

それでも、伊作の言葉は違う物を指していると、留三郎には分かっていた。

言うなれば、

『その想いが綺麗だ』

見えない物こそ美しい。
そんなこと初めて感じた。

「七瀬ちゃん・・・」

伊作が名前を口にする。
いよいよ、始まる。
いや、終わる。

「私の望みを叶えてくれる?」

「ああ」

優しく頷いた神。
一番の笑顔だ。

徐に七瀬は肩幅に足を開く。
握った掌に力が入る。

ぐるりと周りを見渡した。
みんながこっちを見守っている。
自分と同じ気持ちでいてくれている。
誰に応えるわけでもなく、うんと頷いた。
そして、最後に視線をるるるに戻す。

口を開いたその瞬間、

「小松田さんが心配だよ」

ここに来て、それーーっ???
るるるが苦笑いをした。

「大丈夫」

そして、七瀬も笑う。

「私はもう忍たまはやらない」

優秀な忍者になったのだから、その必要がなくなった。

「その代わり、事務員と教師の掛け持ちとして、学園にいさせてもらう」

既に決めてあったこと。
その為に、事務室に入り浸って手伝っていたのは秘密。

それに、

「私はここが好きだから。
忍術学園が大好きだから」

残る事に不安はない。

「ここにて、みんなの成長を見ていたい。
みんなと一緒に自分も成長したい」

それは他人に叶えてもらう望みではない。
自分で掴みたい幸せ。

「そう思わせてくれたのは・・・るるるだよ」

だから、るるるを幸せを願ってる。
大切な大切な親友の幸せを。

「今度は、るるるがそれを掴め!」
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