望んだ事はB

□時空を越えたプロポーズ
4ページ/5ページ

話は三日前に戻る。
七瀬が復活した日。

一人くの一長屋で受けた、見知らぬ男からの着信。
今となってはこちらも信用しているが、全て話そうと判断したのはかなりの葛藤があった。

そして、携帯を切ってから向かったのは、学園長の庵。

学園長と一年は組の担任二人がいる。
何かある度に報告するのは、決まってこの三人。
七瀬にとって、これ以上の信頼はないだろう。

「ほう・・・るるるの幼馴染みか」

「はい」

「よくも信じたものだな・・・」

山田先生が感心しつつ、そして未だ少しだけ疑うように唸る。

「確かに私もそう思います。
ただ彼の言った一言が・・・なんか」

「一言?」

何故か嬉しそうな七瀬。
土井半助が続きをつつく。

「あいつらしいな。
・・・そう言ったんです」

「ほう!」

学園長が目を見開いた。
そして、

「青春じゃのっ!」

七瀬と同じ顔になった。
気付けは、その場にいる四人みんな。
いや、プラス一匹も。

「・・・るるるを元の世界に帰そうと思います」

その和やかな空気を破ったのは、七瀬の決意だった。

「七瀬・・・」

半助が名前を呼ぶ。
それしか、言葉が思い付かない。

それでいいのか?
お前は大丈夫なのか?
そんな言葉、口に出来る訳ない。

「るるるの幸せが、私の望みなんですよ」

そう、この想いの前では、どんな言葉も無意味だ。


「・・・して、それはいつにするつもりだ?」

一呼吸置いて、伝蔵が話の方向を促した。

七瀬がここに来たのは、この決意の報告のため。
だが、一番重要なのはそれを実行する為にはどうするかと言う事なのだ。

「早い方がいいとは思います」

「そうだな」

皆頷く。

「それで、お願いがあります」

「うむ、叶えよう!」

「学園長、まだ内容聞いてませんよ」

呆れる伝蔵。
微笑む七瀬。
それを見て、呆れながら微笑む半助。

学園長の優しさが伝わる。
娘のように、孫のように可愛がった
七瀬とるるる。
彼女達の望む事、今なら全て叶えてやりたい。
そんな温かさだ。

「最後に楽しい思い出を作りたいんです」

「思い出?」

「はい」

七瀬は思う。
この世界に来て色んな事があった。
決して良いことばかりではない。

ただし、結果オーライ。
改めてそう思うのは、忍者だからだろうか。

それでも、最後はやはり笑っていたい。
笑ってほしい。
るるるの愛してやまない、この世界の人間達と。

「よしっ!」

その想い、確かに受け取った!
学園長が立ち上がる。

「忍術学園 秋の大運動会、プラス文化祭ミニじゃっ!」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ