望んだ事はB

□時空を越えたプロポーズ
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「何であんたが出てんの?」

「まあ、色々あってね」

「色々って・・・」

携帯の向こうから聞こえてくる幼馴染みの声は明るい。
色々と言うけれど、色々あるのはこっちの方で、暢気に語っている場合ではない。

「いいから、切るよ!」

「ま、待て!有子!
七瀬さん、頼む!!」

「え?」

その言葉にるるるが止まった。
巧の口から、呼ばれるはずのない名前が出たからだ。
彼は、七瀬と呼んだ。
一度も会ったことのない、目の前の親友の名を。

「彼は知ってるんだ。
この状況をね」

口が開いたままのるるる。
見かねた七瀬は、巧の頼みと共にいきさつを語ることにした。

「私がいなくなった時、この携帯から誰にかけた?」

「あ・・・・」

言われてみれば、思い当たる事一つ。
無意識にかけてしまったのは自分。
そして、なんの解決もなく一方的に切ったのも自分だった。

「その着歴から反対にかけてきたのを私がとったんだ。
その時、話したよ。全てね」

全て。
その言葉に、ドクンと心臓が動いた。

「巧は・・・」

言葉に詰まる。
聞くのが怖い。
余りに非現実なこの状況。

すると、

「バ〜カッ!
信じたっつうの!」

るるるの不安を一瞬にして砕いたのは、この一言。
何でもお見通しのようだ。

「まあ、すごい話ではあるけどな。
・・・でも、信じることに決めた!」

向こうの時間でいったら、数時間も経ってはいない出来事。
自分がいない事だって、まだ立証するには難しい。

なのに彼は、信じてると言う。
それは、

「るるるを信じてるって事だね」

七瀬が言った。

そうだ。
そうなのだ。
形の無いものを信じるとしたら、後は人の繋がりのみ。

会ったことのない七瀬の言葉を、いくら巧でも鵜呑みにはしないだろう。

だから、

「俺は、お前を信じてる」

涙が溢れてきた。
言葉にならないるるる。

七瀬が二人の距離を詰めた。
携帯を持っていない方の手を、るるるの肩に置くと、

「まだ泣くのは早い」

そう言った。

「ん?」

少しだけ意地悪そうな顔をしてるのが気になって、るるるの涙は本当に引っ込んでしまうのだが。
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