望んだ事はB

□時空を越えたプロポーズ
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「トモミちゃん」

「はい、七瀬さん!」

名前を呼ばれて、忍たまとの間に出来た通路から顔を出したくのたま。
顔が少し赤いのは、夕日のせいではない気もする。

「ありがとう」

七瀬がそう言って、トモミちゃんから受け取ったのは、

「携帯?」

るるるが首を傾げる。

「うん。じゃ、かけます」

「は?」

七瀬の理解出来ない行動。
ただ、見つめるしかなかった。

呼び出し音が二回。
それは、相手が直ぐに出たことを示す。

そして、

「有子か!!!」

大きな声が聞こえた。

「えええ????」

るるるも反応する。

「七瀬!な・・・何で?」

手を伸ばし携帯を奪おうとするるるる。
恐らく、これも無意識の行動だろう。

「ふふっ!続けて!」

楽しそうにその手をかわし、七瀬は少しだけ距離を置く為に、後ろにふわりとジャンプした。

携帯はハンズフリーモード。
相手の話す声は、筒抜けだ。

「有子って、誰のこと?」

「るるるさんのこと?」

おかげで周りがざわつき始める。
るるるは偽名。
今更だけど、そうだった。

「これは・・・えっと。
るるるはペンネームだよ!
ね?そうでしょ?」

「ペンネーム???」

折角良いこと言ったと思ったのも束の間、七瀬の言葉は余計に忍たま達の疑心を駆り立てた。

「えっと・・・るるるは絵を描いてて、その時に使う名前で」

「筆名」

「・・・え?」

七瀬の抱える頭に、救いの言葉が降ってきた。
余り聞くことのない声。
みんながその主を振り返る。

「俳人で言うなら、俳号とも言う。
別の名前を語るのは、物書きにはあることだ」

珍しく聞き取れるようにはっきりと。
その声は、

「長次・・・」

七瀬とるるるの顔を見た彼は、小さく頷き笑った。
もちろん見た目で言うと、怒ってるんだけどね。

「へえ〜」

流石は図書委員会委員長の知識。
誰もが感心し、その問題は一件落着。

そして、再び本題に戻らせてくれたのは、

「ちょっと、そろそろ話していいか?」

忘れかけそうになった、携帯から聞こえてきた声だった。

「巧・・・」

るるるが名を呼ぶ。
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