望んだ事はB

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荷物を部屋に引っ張り入れる。
意外と重く、何が入っているのか蓋を開けてみた。

「・・・」

開けてビックリ、ではなかった。
ここで使っていたままの状態。
るるると二人で、普段着から何からそのまま詰め込んでいた。
言うなれば、二人の全財産。

『金楽寺から・・・』

るるるが二日ほどお世話になったのは、少しだけ聞いている。
自分がいなくなった時のるるる。
伊作に教えてもらったのだが、胸が締め付けられる想いがした。

その本人はと言うと、

「私が使い物にならなかった時の事務の仕事が心配だ!」

そう言ったきり、帰ってこない。
そうとう酷い事になっているのかもしれない。

「・・・あ」

篭の中の着物を畳み直そうと何着か取り出すと、ゴトリと音を立てて何かが落ちた。

「携帯か」

堅い音。
こんな音がこの時代にあるとしたら、手っ取り早いとこでいうと武器。
一瞬ビックリしたが、そんなはずもなく苦笑しながら拾う。

「今何時だろう」

いつもつけっぱなしの電源が切られていた事には、さぼと気にする様子もなくオンにすると、

「!!!」

同時に鳴った着信音に心臓が跳ねた。
夜の静かなくの一長屋。
相手を確かめる余裕もなく、出ることとなった。

「・・・も、もしもし?」

ちらりと見たディスプレイには、見知らぬナンバー。
間違いか、迷惑か。
出てしまった事に後悔をする。

「やっと繋がった!有子!!
お前、本当にどこにいるんだよ!」

大きな声。
耳がキーンとする。

知らない声。
知らない名前。
やはり間違い電話かと切ろうとした時、

「・・・有子?」

その名前を繰り返してみた。
更に、

「山田・・・有子?」

久しぶりのフルネームを口にする。
何だか違和感。

そんな七瀬の心情が相手に伝わるはずはない。

「・・・お前、誰だ?」

聞こえてきたのは、明らかにこちらを不信がっている声だった。

「私の携帯なんだけど・・・」
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