望んだ事はB

□るるるの望み
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利吉と忍たまの様子を伺いながら、るるるは神に向き合った。

そして、一言。

「カイト・・・私の望み。
分かるよね?」

彼女にしては、消極的な物言いだったかもしれない。

まだ口に出来ない。
確信に変えないと、怖いからだ。

しかし、返ってきたのは、意外にも辛い答えだった。

「分かるよ・・・けど、出来ないんだ」

「!!」

るるるの眼が見開いた。
次に先程の勢いは、急激に衰え始める。

「るるる、聞け!」

間髪いれずに、カイトがるるるの肩を引き寄せた。
ぐっと力を込める。

「簡単に・・・命のやりとりは出来ない。
それは神でも。
いや、神だからだ」

だから、水神は市原周平を助けたくても手を出す事が出来なかった。

そう付け加えたが、るるるには意味が分からなかったかもしれない。
水神や市原周平の事情を、七瀬から聞き出すことが出来なかったからだ。

ただ、最初の言葉だけは理解した。

「出来ない・・・の?」

「・・・すまない」

「・・・」

嫌だ。
るるるの小さい背中が言っていた。
カイトの胸に頭を埋め、顔は見えない。
泣いているのか、それすらも分からなかった。

命の冒涜。
そんなの百も承知だ。
神ですら、それを守ろうとしている。
そうしなければ、命の平等は保たれないのだ。

「分かってる・・・でも嫌だ!」

るるるが顔を上げた。
その綺麗で悲痛な表情に涙はない。

「何でもいいから!
地獄へ落とされたっていい!
何だって罰を受けるからっ!」

それは瞳から流れなくても、胸を打つ言葉だった。
カイトと目が合う、真っ直ぐな瞳。

「るるる」

銀色の風神が優しく笑った。
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