望んだ事はB

□オラ、悟空!
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「嬉しかったら笑う。ムカついたら怒る。
悲しかったら・・・泣くよね?
何でそれが出来てないの?」

腕を掴んでいるのは仙蔵だったが、勢いで言えば勝っているのはるるるだ。
仙蔵は何も言わず、止まっていた。

「私はね・・・ううん、七瀬はね。
素直なみんなに救われてたんだよ。
いつでも、どんなときも、真っ直ぐなみんなに・・・」

ふと名前を口にする。
その途端、想いが溢れ出す。

「誰かのせいとか、誰かの為とか、そんなのは今は関係ない!!
ちゃんと感情を出せよっ!」

息を大きく吸い込んで、

「そんなみんなだから・・・大好きだったんだよっ!!!」

言い放った。

そして、伝わり始めるその想い。
掴まれた、腕が熱い。

「ふ・・・っ」

決壊。
大粒の涙が間近にこぼれた。
仙蔵だ。

綺麗な瞳から溢れた涙は、白い頬を伝いハラハラと止めどなく流れる。
瞬きもない。
言葉もない。
ただ、流れる。

そして、それが合図だったかのように、

「「「あーーーーーんっ!!!」」」

一年は組の泣き声が聞こえた。
もちろんよく聞こえて来たのが彼らであって、周りを見れば学年問わず泣いていた。
圧し殺していた悲しい気持ちが、今解放される。

三郎次は四郎兵衛に抱き付いて泣いていた。
喜八郎は仙蔵を見つめ、口を小さく開けたまま、ポタポタと涙を落としていた。
三郎は狐のお面を付けて素顔を隠していたが、逆に涙を拭くことが出来ないでいた。
文次郎も熱くギンギン泣いていた。

みんなみんな。
それが生徒だけではない全ての参列者に伝わる。

「・・・先生っ」

「ああ・・・」

きり丸に抱き付かれた半助。
頭をそっと撫でる。
その手に涙が落ちた。
そう、彼も泣いていた。

安堵したようにその光景を見守るるるる。
そして、目が合ったのは、

『雑渡さん・・・』

声を出して泣いている尊奈門の横に立っていた。
彼は泣いてはいない。
涙を流す事が出来ないのだ。

るるるは頷いた。
分かっていますよ。
そう伝えているようだった。
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