望んだ事はB
□オラ、悟空!
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その儀式は校庭で行われていた。
本来ならばもっとひっそりと行うものなのだが、なにせ人が多かった。
生徒と教師はもちろんのこと、その家族、そして知り合いになった人達。
『彼女の人柄じゃな』
金楽寺の和尚が見渡して思った。
そして、もう一つ。
『辛い顔をしておる』
葬儀なのだから、当たり前だとは何故か感じなかった。
今まで、数多くの死者を見送った人間がそう思うのだから、不思議だ。
『・・・そうか』
和尚は理解した。
『辛いはずの葬儀であるのに・・・皆・・・』
口にはしないが、頭の中で言いかけた瞬間、
「ちょっと待ったぁーーーー!!!」
それは遮られることとなった。
「この声は・・・」
少し聞き覚えがあった。
ただ、自分の知っているのは、もっと力がない物だったはず。
すぐそばにいた古き友人と目が合う。
そして、同じように声の方へ体を向けた。
「るるる?」
「るるるさん?」
その二人の声に生徒も反応した。
その場にいた全員が、式の途中と言うことを忘れ、一点に集中する。
「ぎゃあああっ!!」
余りの予想外の行動に誰も動けないでいた。
だからこそ、猛スピードで校庭の真ん中に来た猪がピタッと止まった瞬間に、全ての勢いと共に飛んでいったるるるを助ける事は誰も出来なかった。
「いてて・・・牧之介。
覚えておけよ・・・」
お尻を擦りながら、ヨロヨロと立ち上がる。
気付けば祭壇の目の前だった。
「・・・るるる。遅れてきたのは・・・良いとしても、もう少し静かに来れなかったのか」
「ん?・・・仙蔵」
一段高くなっている壇のすぐ横から声がしたのは、眉間に皺を寄せているその人の物だった。
彼は昨日同様、作法委員会委員長として式の運営を任されている。
元々健康的とは言い難い色白の顔。
今日は更に青白さが増していた。
そして、思わずるるるの口から出た言葉。
「何、しけた面してんの?」