望んだ事はB

□利吉の歩み
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「どう!どう!どうっ!!!
止まれ!!牧之介!!」

そう言うと同時に、猪が前足をブレーキに勢いを殺すように止まった。

「牧之介のバカーーッ!
方向音痴過ぎるのよ!!
もう太陽が高くなって来ちゃってる!
バカバカーッ!」

「痛!叩くな!
ちょっと間違えただけだろ!
人の背中に乗ってるだけのくせに、偉そうに言うな!って、そもそも何で俺が??」

目の前で、何やらもめる一人と一頭。
いや、るるるが言う通り、牧之介。

「違〜うっ!俺は野生の牧之介だ!」

誰に言っている。

「るるる、何を・・している?」

迫力に負けたのか、この展開を理解できないのか、いや両方だろう。

「利吉さん、こんにちは!」

「あ・・いや・・はい、こんにちは」

思わずつられる。
が、それにしてもテンションが高いというより、

『まだ相応では』

そう思ったが、口に出せるはずもなかった。

しかし、言わなくても分かる。

『彼女はそういう人だった』

利吉は思い出した。

ふと視線が合うと、優しく綺麗な瞳が悲しそうに微笑んだ。
またも胸が痛む。
そして、何故か大きく息を吸い込んだかと思うと、

「利吉さん!言いたいことは山程ありますが、それは後で!
先に忍術学園に行ってますので、忍者みたいにチャチャッと追い付いて来てくださいね!」

行け、牧之介!
そう合図すると、猪が文句を言いながら再び砂煙を挙げながら、走り去った。

残された利吉。

「・・・一応、忍者なんだけどね」

もうそのツッコミは、るるるには聞こえるはずもなかった。

「行くか」

先程とは全く違う早さで、その場から姿を消した。
まるで忍者のように。

「だから、忍者だって!」
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