望んだ事はB
□利吉の歩み
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「行くか」
そう言わないと、重い腰を上げる事が出来ない気がした。
すっと立ち上がる。
葬儀への参列は、両親に強要されたものではなかった。
会うのが怖い。
しかし、もう二度と会えないのは、もっと耐えられない。
踏ん切りとか、前へ進むためとか、そんなつもりは全くといってない。
ましてや、七瀬を前にして、自分がどうなるのかすら想像出来ない。
『きっと学園のみんなも・・・』
ふと過る面々。
土井先生はどんな状態でいるのだろうか。
七瀬を慕っていた上級生達は。
そして、何より一年は組は。
『きっと想いは同じなのだろう』
だから、行かないわけにはいかない。
またも胸が締め付けられた。
「行こう」
もう一度、言い聞かせる。
忍術学園への近くて遠い道のりを見つめる。
そして、重い一歩踏み出した瞬間、
「?」
何かを感じた。
ドドドドドドドドドドーーーーッ!
後ろから、
「地響き?!」
振り返る利吉の目に飛び込んできたのは、
「い、猪??・・・るるる??」
利吉の色のなかった目が、大きく開いた。