望んだ事はB

□沈黙の連鎖
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遠くでうめき声が聞こえた気がした。
曲者を始末したに違いない。

きっと大木先生だろう。

伊作は今出来ることの一つが達成された事を冷静に喜んだ。
そして、もう一つ。
傷口を押さえながら、それを待つ。

「利吉・・・」

来た。
山田先生だ。

学園を巡回してきた彼は、銃声を聞いた時何を思っただろうか。
誰が撃たれても良いわけがない。
ただ、それが実の息子だろうとは何をもって予測出来ただろうか。

親子の最期の別れ。
一番近くで見守る事となった伊作。
突如傷口を押さえる手がガタガタと震え出した。

「伊作、ありがとう。もういい」

最初に耳にしたのは、利吉にではなく自分に対しての言葉はだった。

更に、

「るるるを保健室に運んでやってくれ。出来るな?」

頭を撫でながら言うその表情に、胸が締め付けられる。

「・・・っ、はい!」

視線をそらすようにうつ向きながら伊作は立ち上がり、るるるに近付く。

「るるるちゃん?」

顔色が悪いのは当然なのたが、みるみる間に呼吸が荒くなるのが分かった。

過呼吸だ。

ここにいてはいけない。
咄嗟に抱き抱え、その場から離れようとする伊作。

「嫌!利吉さんっ!
ダメ!やだやだ〜!!!伊作!」

抱かれるのを拒否するように、泣き叫ぶるるる。
しかし、強引に抱き締めた伊作は、立ち止まらなかった。

「利吉、よくやったな」

「は・・・い、ちち・・・う・・・え」

背中に聞いた親子の会話。
そして、

「七瀬・・・」

最期の想い。
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